この日の演説・シュプレヒコール

「・・・本日、27日は北方領土の日であります。歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島の各島は歴史の上から見ても・・・我が国日本以外のどこの国の領土にもなったことがありません。また、1858年の日露修好条約や1875年の樺太・千島交換条約から見ても、北方領土が日本固有の領土であることははっきりしています。・・・ロシアはヤルタ協定やサンフランシスコ条約を引き合いに出し、・・・領有の権利がないと言う。日本は1951年、サンフランシスコ条約に調印し、それによって千島列島を放棄しましたが、歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島の四島は、放棄した千島列島の中には含まれていないのであります。ロシアのやり方をいつまでも続けさせるわけにはいきません。豊中市民の皆様、そしてご通行中の皆様、北方領土を正しく理解し、1日も早く日本の領土に帰るよう、皆様で力を合わせて、北方領土奪還に向けて立ち上がろうではありませんか。・・・」

「・・・現在、・・・北方領土問題とともに、200海里漁業経済水域問題という、世界各国とりわけ旧ソ連による漁場締め出し政策により、漁獲が壊滅状態になり、私たちの台所から魚が消えるのも時間の問題と言えます。したがって、北方領土を、単なる領土問題だけでなく、世界三大漁場の一つに入る重大な領域であることを忘れてはなりません。しかるに、旧ソ連は今日に至るまでの数十年間、ヤルタ協定を盾に取り、日本民族北方領土奪還の悲痛の叫びを無視している。しかしながら、旧ソ連が盾に取るヤルタ協定とは、戦勝国である米・英・ソ、この三国が勝手に作り上げた秘密協定であり、わが国にはこの協定に拘束される筋合いなど毛頭ありません。・・・」

「・・・日本の終戦が間近と知った旧ソ連は、一方的に日ソ不可侵条約を破棄、わが国固有の領土、南樺太、歯舞、国後、色丹、択捉、これら北方の島々を不当に奪い取り、・・・」

「・・・この北方領土返還交渉が、・・・主権にかかわる重大問題である・・・、今年1月、日露主要国間に、また、新たな問題が発生しました。事の発端は127日、わが国の物資輸送用の船と、・・・ロシア国境警備局から、・・・出入国カードの提出を要求され、・・・国後島への上陸を断念したのであります。北方四島へのビザなし交流というのは一体どんなものなのか。これは1991年、当時のゴルバチョフソ連大統領と、・・・制限を作らない枠組みを提案、・・・実行されたものであります。・・・医療品の支援は医療制度の全く整備されていない北方領土のロシア警備隊による、わが国政府の少ない・・・、まさに本末転倒で、どちらが宗主国なのかわかりません。ここでロシアの圧力に屈したら、わが国の弱腰外交を内外に曝すことになり、国際社会の笑いものです。我々・・が命を賭してでも守らなければならないことは、今、・・・軟弱でいたら、北方四島領有の既成事実を、ロシア側に認めたことになるのです。・・・尖閣諸島や竹島の領有権を争っている中国や韓国、さらに、拉致事件で敵対関係にある北朝鮮など、重要問題が山積しております。外からの安全保障という国益まで左右する重要ポスト、外務省副大臣に、元スケート選手の橋本聖子を擁立した、麻生総理の政治手腕を疑いたくなります。安全保障の知識などゼロに近い無能な元スポーツ選手議員が、国際秘密刑事出身のプーチン首相と、まっとうな交渉などできるはずがありません。ロシア中央政府では今なおプーチンが影の大統領を務めています。最後に、・・・外務省が、幹部が一丸となって、対ロシア外交に対して、不退転の決意で臨まなければなりません。それにしても、就任4か月、当初から期待などしていなかったが、中曽根外務大臣の存在感も橋本聖子と甲乙つけがたい。所詮は親の七光りなのでしょうか。外務省は、相手国から感謝もされないような、この、無用な援助を直ちに中止にすべきなのであります。・・・」

ロシアは北方領土を返せーーー!!!(かえせーーー!!!)

「ロシアは日本から、出てけーーー!!!(でてけーーー!!!)」

「政府は、北方領土を奪還せよーーー!!!(だっかんせよーーー!!!)」

「択捉返せー!!(えっとろふかえせー!!)」

「国後返せー!!(くっなしりかえせー!!)」

「色丹返せー!!(しっこたんかえせー!!)」

「歯舞返せー!!(はぼまいかえせー!!)」

 いかがでしたか。そして、どう感じましたか。

「歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島の各島は歴史の上から見ても・・・我が国日本以外のどこの国の領土にもなったことがありません。また、1858年の日露修好条約や1875年の樺太・千島交換条約から見ても、北方領土が日本固有の領土であることははっきりしています。」確かにそれだけ見れば日本固有の領土でしょう。しかし、日本人が入ってくる前の、アイヌの人々が主に住んでいた頃の北方領土は日本の領土であると言えるのでしょうか。これは難しいでしょう。また1760年代にロシア人が探検していたという情報もあり、歴史的な根拠を挙げて日本固有の領土であると主張することはそう簡単には認められそうにありません。

「・・・ロシアはヤルタ協定やサンフランシスコ条約を引き合いに出し、・・・領有の権利がないと言う。日本は1951年、サンフランシスコ条約に調印し、それによって千島列島を放棄しましたが、歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島の四島は、放棄した千島列島の中には含まれていないのであります。」「しかるに、旧ソ連は今日に至るまでの数十年間、ヤルタ協定を盾に取り、日本民族北方領土奪還の悲痛の叫びを無視している。しかしながら、旧ソ連が盾に取るヤルタ協定とは、戦勝国である米・英・ソ、この三国が勝手に作り上げた秘密協定であり、わが国にはこの協定に拘束される筋合いなど毛頭ありません。・・・」ヤルタ協定がどのように扱われているかは知りませんが、ヤルタ協定はアメリカがソ連を味方にするための秘密協定であり、あまり大きな拘束力はもっていないと思われます。サンフランシスコ講和条約は南樺太と千島列島の放棄を記述した第二次世界大戦の講和条約ですからヤルタ協定以上の拘束力があるでしょう。しかし、サンフランシスコ講和条約にはどこまでが千島列島なのかが明記されていなかったようです。そこで様々な解釈が生まれ、問題になったのでしょう。なぜ北方四島が含まれていないと言いきれるのか、明確な根拠が日本側として示せるのでしょうか。それは北方四島が含まれているというロシア側の主張も同じでしょうが。

「豊中市民の皆様、そしてご通行中の皆様、北方領土を正しく理解し、1日も早く日本の領土に帰るよう、皆様で力を合わせて、北方領土奪還に向けて立ち上がろうではありませんか。」これも何度も言いますが、北方領土について理解し、北方領土返還を求めることには異論はありません。しかし、仮に北方領土を返還されたとして、その後の行政はどうするのでしょうか。残された人々はどうなるのでしょうか。おそらく右翼民族派はロシア人追放を主張すると考えられますが、北方領土以外に行くあてのない人々はどこで生活すればよいのでしょうか。また、北方領土が返還されれば、インフラの整備が進んでいない北方領土で現在以上にそれらへの投資が必要となるでしょうが、現在の日本政府にそれほどの余裕はあるのでしょうか。以上のことを日本政府も右翼民族派も考えているのでしょうか。北方領土問題は外交問題でありながら、そこにすむ人々の生活の問題でもあることを忘れるべきではありません。

「・・・現在、・・・北方領土問題とともに、200海里漁業経済水域問題という、世界各国とりわけ旧ソ連による漁場締め出し政策により、漁獲が壊滅状態になり、私たちの台所から魚が消えるのも時間の問題と言えます。」占領から60年以上たった今も日本の台所から魚は消えていません。日本の漁船は世界中の海で魚介類を漁獲している上、世界中から魚介類を輸入しています。日本の漁獲高は激減しました。しかし日本の台所に魚は存在します。それに、漁獲の激減は第一次産業を軽視してきた日本政府にも責任があるのではないでしょうか。北方領土がロシアに実効支配されていることと、日本政府が日本の漁業問題を放置したこと、この2つに原因があると考えられます。

「・・・日本の終戦が間近と知った旧ソ連は、一方的に日ソ不可侵条約を破棄、わが国固有の領土、南樺太、歯舞、国後、色丹、択捉、これら北方の島々を不当に奪い取り、・・・」確かにソ連は終戦のわずか数日前に急遽参戦して日本がポツダム宣言を受諾し、戦闘行為を停止した後も日本の領土を占領しました。何度も言いますが、1941年に日本とソ連の間で締結された条約は日ソ中立条約であって、日ソ不可侵条約ではありません。相手国と利害が敵対する一切の第三国援助が禁止される不可侵条約ではなく、ある特定の範囲で第三国支援が認められる中立条約です。当時、不可侵条約を締結し、日本と戦争状態にあった中国との関係により不可侵条約の締結にソ連が難色を示したため、中立条約となったのです。そこには日露戦争で日本が手に入れた既得権益の放棄が問題になったそうです。そのため日本とソ連の関係は不安定であったようでした。ソ連の日本攻撃はその不安定な日ソ関係が対外的な要因により完全に破綻したものと言えるでしょう。ソ連がしたことは条約違反ですが、歴史上の事物は正しくとらえておく必要があります。

「外務省は、相手国から感謝もされないような、この、無用な援助を直ちに中止にすべきなのであります。・・・」気になるのですが、日本の対外援助は相手国から感謝されるためにしているのでしょうか。もっといえば見返りのために援助をしているのでしょうか。それは援助と言うのでしょうか。私はそれを援助ではなく貸与であると考えます。借金を返済しなければならないように、援助に感謝の態度を当然のごとく要求するのは相手国を援助したのではなく、相手国に「貸し」を作って返させるという行為ではないでしょうか。日本がそのような態度に出るならば、それこそ日本は国際社会の笑いものになるのではないかと私は考えます。

総じて見ても、北方領土は日本の領土であり、ロシアは北方領土を返還してほしいという大筋の主張は右翼民族派も左翼も私も一致するのですが、細かな部分で一致しません。右翼民族派はソ連(ロシア)の行った行為の不当性と日本の領有の正当性を強調し、国家そして日本民族の威信にかかわる問題であるとして、日本人が築きあげた北方領土をロシアが返還することを重視していますが、それだけを考えて北方領土問題に取り組んでは解決しないと思われます。北方領土は無人島ではありません。日本人とロシア人が住んでいます。北方領土の帰属が(事実上)変わるならば、島民の生活も一変するはずです。北方領土返還を実現するのが政府の責務であるならば、北方領土返還による影響を最小限に抑え、北方領土のインフラを整備し、島民の生活水準を上げることもまた政府の責務なのではないでしょうか。ロシア政府にそれができないと言うのであれば、日本政府にそれができるという保証はありません。日本の領土になったからと言って、ロシア人たちを北方領土から追放して、あとは何も関知しないと言うという姿勢は許されるのでしょうか。ロシア政府に任せればいいのでしょうが、北方領土から離れられない、または離れたくないという人はどうすればよいのでしょうか。見殺しにはできないはずです。北方領土が返還されれば、それだけの責務が伴うということです。

また、北方領土問題に対して国際社会の笑いものにならないためにも、日本が国際社会において毅然とした態度を示すためにも憲法改正と日本の再軍備が必要であるという内容の演説がこの日聞かれましたが、日本が憲法を改正し国軍を持つことと、国際社会において毅然とした姿勢を示すことは別の問題です。日本が国軍を持ったところで、ロシア政府が北方領土返還に応じる確証はありません。日本が再軍備を実施してロシアが北方領土返還に応じるかどうかは、実際に再軍備をしなければ分からないかも知れませんが、むしろ軍備を持った日本に警戒感を示して対話への道が遠のく可能性もあります。現在の日本のように、武器を持っていても他国の言うことをただ忍従するだけの状態もあり得ます。逆に軍備がなくても国際社会で毅然とした対応をすることへの可能性を模索することも可能ではないでしょうか。少なくとも日本が再軍備をして状況が一転するという事態はあり得ません。

また、事実を正しくとらえなければなりません。1941年日本とロシアの間に締結された条約は日ソ中立条約であって、日ソ不可侵条約ではありません。右翼民族派はこの事実を取り違えているようですが、不可侵条約と中立条約は言葉の違いだけではないはずです。私も国際法の専門家ではありませんので詳しいことはわかりませんが、簡単に調べた限りでは前述のように意味が少し異なるようです。

北方領土は日本の領土です。北方領土は日本に返してもらいたいものです。しかしそれはロシア(ソ連)が日露戦争で領土を日本に奪われて、屈辱の末に手に入れた領土でもあるのです。ロシアはそう簡単に手放す気にはならないでしょう。北方領土の返還には粘り強い双方の対話が不可欠でしょう。そして返還されないことへの辛抱強さも必要です。ただ返還だけを主張しても解決しません。

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