この日の演説・シュプレヒコール

「・・・本日89日、旧ソ連が、・・・日ソ中立条約を、一方的に破棄し、・・・戦後64年たっても、今のロシアは日本固有の領土の、不法占拠を続けております。・・・日本の領土を・・・国家の主権を侵されようとも、お構いなしといった状態であります。・・・私たち日本人はあまりにも我々の問題に無関心です。ロシアに対して、・・・北方領土返還を訴えていこうではありませんか。」

「・・・現在、日露両国政府は、近い将来、平和条約を締結する方向で話し合いを進めておりますが、北方領土全面返還なくして真の友好は断じてあり得ません。ロシアはわが国固有の領土である、国後、択捉、歯舞、色丹および、南樺太、全千島を即刻無条件で返還しなければなりません。・・・」

「本日89日は、56回目の反ロシアデーであります。185427日、日露友好条約により、歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島が日本の領土として、国際的に認められ、それ以来、北方四島は、外国の領土となったことはありません。しかし、昭和20年の89日、旧ソ連は、日ソ中立不可侵条約を一方的に破棄し、北方四島に居住していた日本人17千人に対し、暴行と虐殺を繰り返し、北方四島のすべてを、不法に占領しました(そうだ!)。しかし、その後、1993年の東京宣言などで、4島返還に向けた論議がなされたものの、ロシア側からは過去の非道な行為について、一言も謝罪しないばかりか、事もあろうに、わが国に対し、恐喝まがいの経済援助を求める一方で、日露戦争に参加したことでも知られるコサックを北方領土に入植させたり、北方領での軍事演習を企てることで、北方領土での主権を誇示しようとしています(そうだ!)。このような主権侵害行為に対し、外務省は何ら正式な抗議を行わないばかりか、・・・悠長に構え、何ら危機感を抱いていません。・・・」

「昨日、国会で決議された改正北方領土特別措置法は、相も変わらず、北方領土は歯舞諸島までが日本の領土とするという、戦後60年近く地づいた内容であり、・・・今、ロシアの高校では、・・・北方領土は元来、ロシアの領土であったところ、日本が日露戦争の戦勝交渉において得た、南樺太以南を、先の大戦で取り戻したと教えられています。彼らの戦争とは、・・・領土拡大戦であり、それが常識なのです。当然のことながら、・・・アメリカををはじめとする大戦戦勝国も同じ意識なのであります。その認識をうけ我々も北方領土奪還に向けて挑まなければなりません。」

「・・・我が国の主権と、尊厳を踏みにじった、国際犯罪国家ロシアに対し、・・・断固抗議するものであり、北方領土早期奪還を、断固推進するものであります。・・・」

「・・・今だに弱腰外交を続ける日本政府や、外務省に対し、北方領土早期返還に向けて、毅然たる態度で、対ロ外交に臨むよう、強く要請するものであります。・・・謝罪どころか、小遣い欲しさに、・・・島々を、外交カードに悪用している、侵略国家・ロシア政府を、まだ、信じるのですか?それを鵜呑みにし、弱腰外交を甘んじる外務省に、まだ、期待するのでしょうか?我々の中に、しかと存在する、祖国愛、同胞愛にこそ、忠実になろうではありませんか。・・・ロシアの蛮行に決して時効はありません。・・・」

「択捉返せーーー!!!(えとろふかえせーーー!!!)」

「国後返せーーー!!!(くなしりかえせーーー!!!)」

「歯舞返せーーー!!!(はぼまいかえせーーー!!!)」

「色丹返せーーー!!!(しこたんかえせーーー!!!)」

 いかがでしょうか。そして、どう感じましたか。

「私たち日本人はあまりにも我々の問題に無関心です。」それはもっともなことでしょう。彼らの主張に賛同する必要はないのですが、物事に関心の持つことは重要なことです。無関心は停滞と怠惰をもたらします。このような場面に限らず、日常生活においても、いろいろなことに関心をもつことは重要です。私たち一人ひとりの関心が停滞や怠惰を破壊し、世界を変えていくのです。

「・・・現在、日露両国政府は、近い将来、平和条約を締結する方向で話し合いを進めておりますが、北方領土全面返還なくして真の友好は断じてあり得ません。ロシアはわが国固有の領土である、国後、択捉、歯舞、色丹および、南樺太、全千島を即刻無条件で返還しなければなりません。・・・」「択捉返せーーー!!!(えとろふかえせーーー!!!)」「国後返せーーー!!!(くなしりかえせーーー!!!)」「歯舞返せーーー!!!(はぼまいかえせーーー!!!)」「色丹返せーーー!!!(しこたんかえせーーー!!!)」国際法的に見れば樺太と北方島以外の千島列島は1951年サンフランシスコ講和条約で領有権を放棄している(当時のソ連はこの条約に署名していません)ため、返還のためにはサンフランシスコ講和条約の破棄が必要になります。国際法に則って領有権を主張できるのは(サンフランシスコ講和条約を破棄しないならば)北方四島だけです。ロシアとの平和条約を結ぶには長い時間がかかるでしょう。それまで友好を築き上げていくことはできます。日本最大の右翼民族派団体・日本青年社(尖閣諸島の魚釣島に灯台を建設した団体)のロシア訪問団が今年3月にロシアを訪問し、ロシアの政治家や財界関係者、そして学生たちと交流しましたが、そこには(記事を見る限り)建設的な雰囲気がありました。そのような活動の積み重ねが北方領土返還と日本・ロシアの真の友好につながっていくのではないのでしょう。ただ北方領土を返還せよ、と言ったところで返還されないのです。運動が無駄であるとは思いませんが、北方領土返還のためにはさまざま努力が必要ですし、その努力を惜しんではならないでしょう。

185427日、日露友好条約により、歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島が日本の領土として、国際的に認められ、それ以来、北方四島は、外国の領土となったことはありません。」1760年代にはロシア人による探検がおこなわれたという記録があるそうです。厳密には歴史的に日本の領土であるとは言い難いのです。そもそも日本固有の領土とは一体どのような概念でしょうか。

「しかし、昭和20年の89日、旧ソ連は、日ソ中立不可侵条約を一方的に破棄し、北方四島に居住していた日本人17千人に対し、暴行と虐殺を繰り返し、北方四島のすべてを、不法に占領しました(そうだ!)。しかし、その後、1993年の東京宣言などで、4島返還に向けた論議がなされたものの、ロシア側からは過去の非道な行為について、一言も謝罪しないばかりか、事もあろうに、わが国に対し、恐喝まがいの経済援助を求める一方で、日露戦争に参加したことでも知られるコサックを北方領土に入植させたり、北方領土での軍事演習を企てることで、北方領土での主権を誇示しようとしています(そうだ!)。」確かにソ連が行った暴行や虐殺、シベリア抑留、北方領土での軍事演習は許されるものではないでしょう(コサックの入植の事実は確認する必要がありますが)。しかし、シベリア抑留については1993年に当時のエリツィン・ロシア大統領が謝罪しています。それを謝罪とは言わないのでしょうか。また、何度も言いますが日ソ中立条約は不可侵条約ではありません。不可侵条約でも中立条約でも条約当事国間の相互不可侵が保障されます。しかし、一方の条約当事国が他の国と紛争をしているとき、不可侵条約では相手国への一切の支援が禁止されますが、中立条約では中立義務に違反しない限り第三国への支援が許されます。日ソ中立条約は、北方の安全を確保すると同時に、ソ連の後ろ盾を得ることでアメリカに対抗したい日本と、日本との同盟国であるドイツと戦争をしており、日本とドイツの挟み撃ちを避けたいソ連との間に生まれた妥協の産物です。その事情を知っておく必要があります。

「・・・今、ロシアの高校では、・・・北方領土は元来、ロシアの領土であったところ、日本が日露戦争の戦勝交渉において得た南樺太以南を、先の大戦で取り戻したと教えられています。」よく調べたものです。ぜひその高校の授業内容を見たいものです(その際には日本語訳または英訳をお願いします。私はロシア語が読めませんので)。まず、ロシアの教育システムがどのようなものか知りませんが、ロシアの高校といっても、学習する内容は高校によってさまざまでしょう。右翼民族派の言うような内容がロシア全土で果たして教えられているのでしょうか。仮にそうであるとして考えると、そこからわかることは、世界中の国はどこでも自国に都合のよいように歴史を教えたがるということでしょうか。ロシアは北方領土を自国のものと教え、アメリカは日本への原爆投下は第二次世界大戦の終結のために必要であったと教えます。中国の「愛国教育」もそうですし、日本の「新しい歴史教科書」運動もその一端でしょう。歴史はその国のアイデンティティに結び付く問題であるがゆえにイデオローグに利用されやすいのかもしれません。しかし、それでは歴史問題の収拾がつきませんし、他国への憎悪が募るだけです。国同士の相互理解というものが重要でしょう。各国がその独自性を失わない程度の歴史への共通認識を持つことが重要です(実行が困難でしょうが)。

「彼らの戦争とは、・・・領土拡大戦であり、それが常識なのです。当然のことながら、・・・アメリカをはじめとする大戦戦勝国も同じ意識なのであります。その認識をうけ我々も北方領土奪還に向けて挑まなければなりません。」明治時代〜第二次世界大戦前の日本人もそのような意識でしょう。そもそもこのような見方自体が偏見ではありませんか。その見方をもったままどのようにして北方領土を取り戻すのですか。この見方に何か根拠はあるのですか。常識といっても右翼民族派の常識であって、一般に通じるとは限りません。

「・・・我が国の主権と、尊厳を踏みにじった、国際犯罪国家ロシアに対し、・・・断固抗議するものであり、北方領土早期奪還を、断固推進するものであります。」「・・・謝罪どころか、小遣い欲しさに、・・・島々を、外交カードに悪用している、侵略国家・ロシア政府を、まだ、信じるのですか?」確かに旧ソ連(ロシア)は日本の主権と尊厳を踏みにじりました。しかし、ロシアを国際犯罪国家、侵略国家呼ばわりしたところで北方領土は返還されません。ロシアを国際犯罪国家、侵略国家呼ばわりしている限りこの演説は低俗なプロパガンダでしかなく、何ら正当性を持ちません。逆にロシア政府及び国民に不快感を抱かせ、北方領土返還交渉を難航させるだけです。また、ロシアに北方領土を外交カードに使われていることを否定することは困難ですが、ロシアを外交で信用しないとなれば、どのように北方領土問題を解決するのでしょうか。外交とはある程度の信頼関係を以て成り立っているはずです。国際社会においてロシアを信用できなければ、北方領土問題を解決する手段としてはもはや戦争しかありません。戦争になれば双方に多くの犠牲を強いる上に、日露両国に巨大な禍根を残すに違いありません。それだけでは何としても避けたいのは私だけではなく、右翼民族派にとっても同じでしょう。信用しにくいとしても、ロシアを信用するしかありません。

「我々の中に、しかと存在する、祖国愛、同胞愛にこそ、忠実になろうではありませんか。」右翼民族派の言う「祖国愛」や「同胞愛」とは何なのでしょうか。その定義を間違って忠実になればその「祖国愛」、「同胞愛」人を貶め、傷つけるとても恐ろしいことになるでしょう。また、その「祖国愛」、「同胞愛」を彼らは「左翼」に対しても持っているのでしょうか。とても持っているようには見えません。

総じて見て、北方領土を取り戻したいと考えるあまり、ロシアと日本政府への攻撃になってしまっているように見受けられます。そのようなことをしてもロシアの態度を硬化させるだけで北方領土は返還されないのです。粘り強く北方領土返還に向けて交渉する必要があるでしょう。ただ返還を主張しても返還されません。そして返還されないことにいら立たない忍耐強さも大切です。また、今回も北方領土が返還された後どうするのかについての内容はありませんでした。北方領土返還に導く過程も重要ですが、北方領土が返還されてからどうするかを考えるのはそれ以上に重要ではないでしょうか。返還されてから考えては遅いのです。返還されてから、北方領土の生活状況が悪化するようなことがあってはなりません。返還を島民に後悔させてはなりません。

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