この日の演説・シュプレヒコール

 「良識ある、大阪府民の皆様、来る9月29日は、反中共デーと称し、共産主義による害悪を皆様により深く理解していただき、共にこれを粉砕していこうという日でございます。近年、中国共産党の、我が国に対する横暴は、限度を知らず、靖国問題、慰安婦問題、教科書問題、果ては尖閣列島の領有権侵害など、国権の侵害を続けております。昨今におきましては、尖閣諸島において、中国漁船による領海侵犯、及び海上保安庁の巡視船に衝突させた海洋事件は、明らかに我が国に対する主権侵害の何者でもなく、断じて許すことはできない。尖閣諸島は、歴史的にも、地政学的にも、明らかに日本固有の領土、日本固有の領土である。百歩譲っても、中国の領土ではないのです。歴史観を歪曲し、捏造してまで自国の我を通す中国の傲慢極まりない態度を許してはなりません。まさに、盗人猛々しいとはこのことです。今の中国では世界に尊敬される大国には程遠く、今回の中国の行為は、まさに野蛮国そのものです。このままでは沖縄さえ狙うでしょう。我が国の政治家が弱腰の今、日本国民総意で中国を断乎糾弾しましょう。」

 「中国人をたたき出せーーー!!!(たーたきだせーーー!!!)」

 「ロシア人を消去せよーーー!!!(しょーきょせよーーー!!!)」

 いかがでしたか。そして、どう思われましたか。

「来る929日は、反中共デーと称し、共産主義による害悪を皆様により深く理解していただき、共にこれを粉砕していこうという日でございます。」「共産主義による害悪」が何を指しているのかわかりませんが、「共産主義による害悪」と「中国による害悪」は差異があります。共産主義国は中国だけではありませんし、中国の害悪の原因は必ずしも共産主義に起因しないものと考えられます。そもそも右翼民族派にとって共産主義そのものがこの世から滅すべきものなのであり、形式上共産主義体制をとっている中国もまた滅すべき存在なのでしょうが。

「近年、中国共産党の、我が国に対する横暴は、限度を知らず、靖国問題、慰安婦問題、教科書問題、果ては尖閣列島の領有権侵害など、国権の侵害を続けております。」もし政治家の靖国神社参拝や日本国内で使用される教科書に中国政府が意見することが「横暴」や内政干渉と言うのであれば、中国国内での教育を「反日教育」などと批判したり中国の歴史観を「反日的」と批判したりすることもまた「横暴」や内政干渉というのではありませんか。そうでなくとも、尖閣諸島の領有権侵害はともかく、靖国問題、従軍慰安婦、教科書問題などは日本政府の態度が原因かもしれません。国際社会の目を気にしない国内政治は破滅します。そのことは中国政府にも言えますが。

「歴史観を歪曲し、捏造してまで自国の我を通す中国の傲慢極まりない態度を許してはなりません。まさに、盗人猛々しいとはこのことです。」そのことは日本あるいは右翼民族派にも言えるのではありませんか。右翼民族派のアジア「侵略」戦争である太平洋戦争をアジア「解放」戦争である「大東亜戦争」と捏造し、アジアの人々に感謝を強要する姿勢こそ、盗人猛々しいと言うのではありませんか。

「今の中国では世界に尊敬される大国には程遠く、今回の中国の行為は、まさに野蛮国そのものです。」日本が野蛮な国でないと証明する手段はあるのでしょうか。そもそも誰が野蛮な国とそうでない国を判断するのですか。中国人やロシア人を叩き出せと叫ぶ右翼民族派こそよほど「野蛮」なのではないでしょうか。

「このままでは沖縄さえ狙うでしょう。」中国政府は今や日本への帰属意識の強い沖縄を占領する思惑をもっているのでしょうか。そもそも、中国は日本を占領して得るものとは何でしょうか。資源や経済力以上に住民からの反発を得ると思いますが(ある意味でそれは日本において民族主義勃興の絶好の機会でもあります)。つまり中国にとってすれば日本を占領して得られる利益よりもリスクの方が大きいのです。

「我が国の政治家が弱腰の今、日本国民総意で中国を断乎糾弾しましょう。」日本国民が中国を糾弾してどうするのでしょうか。弱腰の日本政府に毅然とした対応をするよう働きかけて行く他ないと思えますが。

「中国人をたたき出せーーー!!!(たーたきだせーーー!!!)」「ロシア人を消去せよーーー!!!(しょーきょせよーーー!!!)」

最早何から突っ込めば良いのかわかりません。ただの人種差別以外の何物でもありません。そのような人種差別言動は日本政府にとってなんの利益にもならないどころかかえって国際社会から相手にされなくなるなどの損害が増すばかりです。そのようなことなど考えていないのでしょうが。

 総じて見ると、去年と変わらず中国への恐れと蔑視が奇妙な形で混在した内容となっていました。そのような感情は存在しても日中間の問題の解決の邪魔になるだけです。日本と中国が戦争するわけにはいかないため、やはり毅然とした態度で粘り強く対話をしていくしかないのでしょう。

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