この日の演説・シュプレヒコール

「本来、不偏不党であるべき教師を政治思想実現のため、密閉された教室内で反対性の洗脳教育を行なっているのであります。日教組の組織率が高く、組合活動も活発な時点において、全国学力テストの成績が、明らかに低下しております。子供たちは、祖国日本を恨み、自らの将来に対して絶望し、今が楽しければと、短絡的に犯罪に走り、凶悪な事件、学級崩壊が発生するのであります。現在においては、子供たちに限らず、教師自ら犯罪に手を染め、中でも、猥褻行為で処分された教師の数は年々増加傾向にあります。この異常事態に対し、文部科学省は教育指導要項を遵守する旨、・・・通達しましたが、日教組はこれに対し、反発の態度を見せており、国民多数の道徳教育促進の声にも、耳を傾けようとはしないのであります。これは教師自らが、政治目的のために、教育現場を放棄しているのであります。現場の教師たちは、追い詰められた生徒のことや、犯罪の増加に対し、知らぬ存ぜぬの弁明に終始しております。・・・一刻の猶予もありません。青少年に、再び凶悪犯罪を繰り返させないためにも、偏向教育集団、日本教職員組合・日教組の無責任な教師たちを、学校現場から追放し、教育の正常化と道徳教育の確立にたちあがりましょう。民主党が政権を取り、日教組のドン、輿石東民主党幹事長が政権与党を牛耳る中、ますます日教組の社会主義・共産主義の偏向教育が、教育現場でますます子供たちに押し付けられています。・・・」

「市民の皆さん、お騒がせを致します。日教組大会があれば必ずこの大音響と交通渋滞、必ずこのようなことになります。皆さん、二度と日教組には、あるいは全教には、会場を貸さないように、市民の良識をもって県に対し抗議をいたしましょう。また本日から明日、明後日と、亡国教師集団が富山にやってきております。我々の左手にある産業展示館にて、政治集会を開催しております。このような政治集会を二度と開催させないように抗議をしなければなりません。」

「・・・本日・・・反日、自虐教育行う赤旗日教組による教研集会が開かれております。・・・」

「・・・ゆとり教育を提唱し、週休2日を約束・・・結果的に子供たちの学力はどんどん下がっています。皆さん、自分たちのために、ゆとり教育を提唱し・・・しかしながら一方でこの教員共は・・・教研集会を開催しているんです。その目的は自分たちの労働条件の改善、私利私欲であります。そして、先生は、地方公務員法によって消防士、警察官、自衛隊員のように政治活動を禁止されています。しかしながら、今民主党の幹事長である輿石東は、立派に、骨の髄まで日教組という男であります。皆さん、政治活動を禁止しているこの国の教師が、この輿石を支えるため、また日教組・先生の国会議員を支えるため、今、集会を開いているのです。そして、・・・今の民主党は、日本のためになっていますか。よく考えてください。日教組を断固粉砕しなくてはなりません。このままでは皆さんのお子さんやお孫さんが・・・駄目になってしまいます。私たちと共に、日教組を完全に撲滅するまで戦おうではありませんか。・・・」

「反日国賊集団日教組を、粉砕せよーーー!!!(ふんーさいーせよーーー!!!)」

「にっきょーそーーー!!!(ふーんさい!!!)」

「国賊集団日教組を富山からたたき出せーーー!!!(たーたきだせーーー!!!)」

いかがでしたか。そして、どう思いましたか。

「本来、不偏不党であるべき教師を政治思想実現のため、密閉された教室内で反体制の洗脳教育を行なっているのであります。」たしかに教師は理想的には不偏不党であるべきでしょう。しかし、所詮教師も人間であり、その教育にはどうしても教師個人の思想・哲学が反映されてしまいます。思想・哲学は人によって様々でしょう。様々な教師の姿を見て自らの姿をデザインしていくのもまた「教育」というのではないでしょうか。いずれにせよ(「密閉」という表現がよく理解できませんが)教室内で反体制の洗脳教育など行なっていないでしょう。日教組の教育が本当に「反体制」であるならば、「戦後体制」に対して反体制の人間が増えてゆき、日本国憲法が破棄されるという右翼民族派にとっては歓迎すべき事態が起こっていることになりませんか。あるいは「反体制」というものが「社会主義・共産主義」を意識しているとして、右翼民族派は現在の体制を良しとするのでしょうか。

「日教組の組織率が高く、組合活動も活発な時点において、全国学力テストの成績が、明らかに低下しております。」「日教組の組織率が高く、組合活動も活発な時点」というのがどの時代を意識しているのかわかりませんが、このように言える証拠はあるのでしょうか。また、何をもって成績が低下しているというのでしょうか。テスト問題の質は年によって様々でしょうし、成績の裏にどのような事情(成績が悪いと思われる子供を欠席扱いにする、学校がテスト対策をする等)が潜んでいるかわかりません。そもそも、右翼民族派は教育の質をテストの点数だけで測ることができると考えているのでしょうか。社会には学校など不要で学習塾さえあればよいのでしょうか。テストの点数は教育内容の習熟度を図る上で最もわかりやすい指標ですが、教育の質はテストの点数だけで決まるわけではありません。

「子供たちは、祖国日本を恨み、自らの将来に対して絶望し、今が楽しければと、短絡的に犯罪に走り、凶悪な事件、学級崩壊が発生するのであります。」先の一文からこの文に全く意味がつながりません。なぜ成績が低下して祖国を恨むのか、なぜ自らの将来に対して絶望するのか、先に述べた一文からは理解できません。凶悪な犯罪や学級崩壊はここで述べたような理由だけで起こるものではありません。

「現在においては、子供たちに限らず、教師自ら犯罪に手を染め、中でも、猥褻行為で処分された教師の数は年々増加傾向にあります。」教師の犯罪など現在に始まったことではないでしょう。犯罪白書等を見る限りにおいては、性犯罪自体は増加しておらず、むしろこの20年程は横ばいであるといえます。性犯罪の加害者が教師であるかどうかはわかりませんし、ましてやその教師が日教組の組合員であるかどうかなど見当がつきません。単に「反日マスコミ」が教師の犯罪をセンセーショナルに取り上げているだけはないでしょうか。

「この異常事態に対し、文部科学省は教育指導要項を遵守する旨、・・・通達しましたが、日教組はこれに対し、反発の態度を見せており、国民多数の道徳教育促進の声にも、耳を傾けようとはしないのであります。これは教師自らが、政治目的のために、教育現場を放棄しているのであります。」先に書いたことから考えると現在の日本の犯罪状況は異常事態でも何でもありませんし、教育指導要項を遵守するような内容の文部科学省からの通達も文部科学省のウェブサイトを見る限り見当たりませんでした。通達の存在に関しては私の調べが及んでいないだけかもしれないためわかる方はお教えください。道徳教育促進は本当に国民多数の声でしょうか。文部科学省の通達の内容が国民の要求と一致しているのでしょうか。そもそも推進されるべき道徳教育の内容とは何なのでしょうか。推進すべきかどうかはその内容にも大きく左右されると思われます。以上のように「日教組は国民多数の声を無視している」という図式は必ずしも成り立ちません。ましてや教育現場を放棄しているのではありません。

「現場の教師たちは、追い詰められた生徒のことや、犯罪の増加に対し、知らぬ存ぜぬの弁明に終始しております。」いじめ自殺した生徒について知らぬ存ぜぬというのは許されませんが、犯罪の増加に関してはここ数年でいえばそのような事実はありませんし、ありもしない事象に対して弁明のしようもないでしょう。それとも、右翼民族派の主観では日本では犯罪が増加していて、その原因が日教組であるとされているのでしょうか。

「・・・一刻の猶予もありません。青少年に、再び凶悪犯罪を繰り返させないためにも、偏向教育集団、日本教職員組合・日教組の無責任な教師たちを、学校現場から追放し、教育の正常化と道徳教育の確立にたちあがりましょう。」何度も同じことを書きます。「偏向教育集団、日本教職員組合・日教組の無責任な教師たち」の排除と教育の正常化との因果関係が本当は一体どのようになっているのかわかりませんが、おそらく右翼民族派の間では「教育が正常化されるならば、「偏向教育集団、日本教職員組合・日教組の無責任な教師たち」は排除されている」という命題になっているのでしょう。しかし、それは命題ではありません。「偏向教育集団」が解体されることが日本の教育にとってプラスになるか分かりませんし、マイナスになるかも知れません。「偏向教育集団」の中にも教師として優秀な人もいるでしょう。そもそも、「偏向教育集団、日本教職員組合・日教組の無責任な教師たち」を排除するとはどういうことであり、正常化された教育と確立された道徳教育の全体像がどのようであるかもわかりません。その内容次第では、右翼民族派のいう「正常化された教育」も「日教組・全教の偏向教育」と内容が違うだけで性質が同じものであるかもしれません。その時は同じように「偏向教育」と言いましょう。

「民主党が政権を取り、日教組のドン、輿石東民主党幹事長が政権与党を牛耳る中、ますます日教組の社会主義・共産主義の偏向教育が、教育現場でますます子供たちに押し付けられています。」輿石東参議院議員が民主党幹事長に就任してから具体的に教育行政において何が起こったというのでしょうか。何をもって「日教組の社会主義・共産主義の偏向教育」が「教育現場でますます子供たちに押し付けられて」いるのでしょうか。大阪府における「日の丸・君が代条例」など、むしろ日教組の掲げる思想・哲学とは違う政策が推し進められているように思えますが。

「市民の皆さん、お騒がせを致します。日教組大会があれば必ずこの大音響と交通渋滞、必ずこのようなことになります。皆さん、二度と日教組には、あるいは全教には、会場を貸さないように、市民の良識をもって県に対し抗議をいたしましょう。また本日から明日、明後日と、亡国教師集団が富山にやってきております。我々の左手にある産業展示館にて、政治集会を開催しております。このような政治集会を二度と開催させないように抗議をしなければなりません。」「反日国賊集団日教組を、粉砕せよーーー!!!(ふんーさいーせよーーー!!!)」「にっきょーそーーー!!!(ふーんさい!!!)」「国賊集団日教組を富山からたたき出せーーー!!!(たーたきだせーーー!!!)」日教組と右翼民族派のどちらが「亡国集団」でしょうか。その答えは誰にもわかりません。右翼民族派が街宣車で大挙して押しかけてくるのを止めればよいということは簡単ですが、それは表現の自由の侵害です。しかし、この主張を聞けば左翼勢力はさらに語気を強めて、抗議街宣のことを「右翼暴力集団の暴力的妨害」と表現するでしょう。そもそも、右翼民族派は一般市民からただの迷惑集団だと思われてよいのでしょうか。そのことを心配する人も右翼民族派の中にはいます。

「・・・ゆとり教育を提唱し、週休2日を約束・・・結果的に子供たちの学力はどんどん下がっています。皆さん、自分たちのために、ゆとり教育を提唱し・・・しかしながら一方でこの教員共は・・・教研集会を開催しているんです。その目的は自分たちの労働条件の改善、私利私欲であります。」ゆとり教育で学力が低下したかどうかはよくわかりませんが、仮にそうだとすれば、それは日教組の責任だけでなく、文部科学省の責任もあるでしょう。しかし、右翼民族派は文部科学省の責任について触れることはありません。ゆとり教育を最終的に教育方針とし決定したのは文部科学省です。いうなれば、日教組はゆとり教育の立案者であり、文部科学省はその実行者です。立案者ばかりが非難されて、実行者は非難されないのでしょうか。日教組には教育行政に対して何の決定権もありません。また、週休5日で指導内容を履修させなければならなくなった教師にとって現在のゆとり教育は教師の「私利私欲」のためになっているとは思えません。そもそも、労働条件の改善を「私利私欲」というのならば、すべて労働運動の歴史は「私利私欲」の歴史となります。教員の過労死や過労による鬱病が発生する中、公務員の労働三権が制約を受けているとはいえ、労働条件の改善を主張したくなるのは当然のことです。労働者が快適に労働できる条件で労働効率は向上しますし、良い労働の結果が残せるものです。右翼民族派は、労働者は過労死するまで黙って働けと言いたいのですか。

「そして、先生は、地方公務員法によって消防士、警察官、自衛隊員のように政治活動を禁止されています。しかしながら、今民主党の幹事長である輿石東は、立派に、骨の髄まで日教組という男であります。皆さん、政治活動を禁止しているこの国の教師が、この輿石を支えるため、また日教組・先生の国会議員を支えるため、今、集会を開いているのです。」地方公務員法に抵触していることは、私も全国教研集会の場に居合わせたことがないのでわかりませんが、事実であれば弁明のしようがなく、日教組も改めるべきであると思いますし、輿石東幹事長への支援も止めるべきであると思います。教研集会も、純粋な教育研究のみを行うようにすればよいのです。そもそも日教組は、地方公務員法第36条が日本国憲法第19条に違反しているというのでしょう。したがって、地方公務員法は日教組の中では守らなくてもよい法律となっているのかもしれません(それでは現在において理屈が通らないのですが)。輿石幹事長はたしかに日教組の出身ですが、彼は果たして日教組の思想・哲学に基づいて行動しているように見えるでしょうか。私にはただの小沢一郎元幹事長の傀儡にしか見えません。

「日教組を断固粉砕しなくてはなりません。このままでは皆さんのお子さんやお孫さんが・・・駄目になってしまいます。私たちと共に、日教組を完全に撲滅するまで戦おうではありませんか。」日教組を解体する必要があるのでしょうか。教員の相互交流組織としてなら右翼民族派も存在を許してもよいのではないでしょうか。教師も人間である以上は子供たちのために滅私奉公せよと無理強いはできませんから。子供が「駄目になる」とはどういうことでしょうか。日教組の偏向教育が40年以上続いてきたのであれば、街宣をしている右翼民族派も「駄目になって」しまった方々なのですか。

総じて見ると民主党政権批判とあわせて日教組批判が語られています。特に輿石東幹事長に関係した内容が多いようです。たとえ民主党が政権を掌握したところで、その支援組織である日教組の主張が必ずしも通るわけではありません。日教組にも右翼民族派にも正しい主張と間違った主張はあります。お互いに妥協点を見出して、ともに日本がよくなるように政策を提言してゆけばよいのではないでしょうか。

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