この日の演説・シュプレヒコール

「・・・来る27日は、北方領土の日であります。この日は、・・・日本国政府によって定められました。・・・北方領土が、我が国の領土であることを、全国民が認識し、北方領土奪還すべし国民運動をくまなく国民で展開していたいものであります。」

「みなさんは自分の固有の土地を他人に侵略され、奪われたとき、黙って指をくわえてみていますか。・・・そのようなことはないでしょう。必ず、あらゆる手段を講じ、奪い返すのではないでしょうか。北方領土も同じことなのです。・・・我が国の領土を取り戻すため、いま国民の皆様が声を上げ、行動を起こす時なのであります。27日は、北方領土の日であります。我々とともに、立ち上がりましょう。」

 「北方領土返還せよーーー!!!(へんかんせよーーー!!!)」
 「出―てけー出てけーローシーア!!!(でーてけーでてけーーローシーア!!!)」

「ロシア政府は我が国固有の領土、北方領土を返せーーー!!!(かえせーーー!!!)」

「ロシア政府の独裁者プーチンの手先、ロシア領事館を、この豊中から、叩き出せーーー!!!(たーたきだせーーー!!!)」

「北方領土を不当に占拠し続ける、侵略国家ロシアを叩き潰せ―――!!!(たーたきつぶせーーー!!!)」

いかがでしたか。そして、どう思いましたか。

「みなさんは自分の固有の土地を他人に侵略され、奪われたとき、黙って指をくわえてみていますか。・・・そのようなことはないでしょう。必ず、あらゆる手段を講じ、奪い返すのではないでしょうか。北方領土も同じことなのです。・・・我が国の領土を取り戻すため、いま国民の皆様が声を上げ、行動を起こす時なのであります。27日は、北方領土の日であります。我々とともに、立ち上がりましょう。」個人間の問題と国家間の問題を同列に扱うことはできません。外交問題はそこまで単純な問題ではありません。そもそも個人間の問題でも、「あらゆる手段」は法律の範囲内のことしかできません。個人間でも国家間でも暴力で奪い返したところで、何の解決にもなりません。国民が北方領土返還の声を上げ、行動を起こすことは重要ですが、あくまで対話を基調としたものであるべきです。武力に頼るなど無意味です。

「出―てけー出てけーローシーア!!!(でーてけーでてけーーローシーア!!!)」この主張を主張した側は北方領土返還のための手段と考えているかもしれませんが、私はこれを北方領土返還後にすることと受け取りました。今まで育まれてきた日本人とロシア人の交流はどうなってしまうのでしょうか。すべて「偽りの友好」であって、無駄なものになってしまうのでしょうか。断じて違うはずです。そしてもう一つ、北方領土が返還されたとして日本の統治はうまくいくのでしょうか。占領から既に60年以上が経ち、生活様式やインフラなどロシアのためのものもかなり造られていると考えられます。その異国に近い土地を日本はうまく統治できるのでしょうか。

「北方領土返還せよーーー!!!(へんかんせよーーー!!!)」北方領土について理解し、北方領土返還を求めることには異論はありません。しかし、仮に北方領土を返還されたとして、その後の行政はどうするのでしょうか。残された人々はどうなるのでしょうか。おそらく右翼民族派は北方領土に在住しているロシア人追放を主張すると考えられますが、北方領土以外に生活するあてのない人々はどこで生活すればよいのでしょうか。また、北方領土が返還されれば、北方領土を日本政府が統治しなければならないわけですが、現在の日本政府にそれほどの余裕はあるのでしょうか。それらを何も考慮しなければ最悪の場合中国残留孤児やポートピープルの悲劇を繰り返しかねません。以上のことを日本政府も右翼民族派も考えているのでしょうか。北方領土問題は外交問題であるわけですが、その中にはそこにすむ人々の生活の問題が存在することを忘れるべきではありません。それらの問題も日露の間で競技しておく必要があるでしょう。

「ロシア政府の独裁者プーチンの手先、ロシア領事館を、この豊中から、叩き出せーーー!!!(たーたきだせーーー!!!)」ロシア領事館・大使館をロシアに帰らせて、ロシアとの接点がなくなったとき、ロシアとの問題をどのように話し合うのでしょうか。ロシアとの接点がなくなれば、それだけ北方領土返還に向けた交渉などがしにくくなり、解決がますます遠ざかります。それは日本にとってもマイナスとなるはずです。

「北方領土を不当に占拠し続ける、侵略国家ロシアを叩き潰せ―――!!!(たーたきつぶせーーー!!!)」ロシアを一方的に「火「侵略国家」などと罵倒したところで、ロシア側の心証を悪くするだけで、北方領土返還は進みません。この演説は低俗なプロパガンダでしかなく、何ら正当性を持ちません。

総じて見るに、北方領土の返還が絶望的な状況に陥っていく中、右翼民族派の活動にも閉塞感が漂っているようでした。国民運動を呼びかける内容のものが多く、安倍晋三内閣にもそれほど期待を寄せていないようです。北方領土は日本の領土であり、日本に返還してもらいたいものです。しかしそれはロシア(ソ連)が日露戦争で南樺太と千島列島という領土を小国日本に奪われ、その屈辱の末に手に入れた領土でもあるのです。ロシアはそう簡単に返還する気にはならないでしょう。北方領土の返還には日本政府の毅然とした対応と粘り強い双方の対話と長い時間が不可欠であると言えます(だからと言って日本の国防力を強化しても日露の軍事的緊張が増すだけで大した意味を持たないでしょう)。そして北方領土がなかなか返還されないことへの辛抱強さも必要です。ただ返還だけを繰り返し主張しても解決しません。また北方領土返還に導く過程も重要ですが、北方領土が返還されてからそれまで生活していた住民の処遇はどうするのか、その後どのように北方領土を統治していくのかを考えるのはそれ以上に重要ではないでしょうか。返還されてから考えては遅いのです。返還されてから、北方領土の住民の生活状況が悪化するようなことがあってはなりません。北方領土返還を住民に後悔させてはなりません。

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