この日の演説・シュプレヒコール

「・・・皆様は、村山・河野談話というものをご存知でしょうか。村山談話とは、ときの内閣総理大臣であった、村山富市が平成7815日、植民地支配および侵略によってアジア諸国の人々に対し、多大な損害と苦痛を与えたことを心からお詫びすると発表したものであり、河野談話とは、平成584日、当時の河野洋平内閣官房長官が、・・・女性たちが、旧日本軍人のせいの相手をさせられたという、慰安婦問題について、旧日本軍が関わっていたことを認め、お詫びすると発表した声明であります。これぞまさに、自虐史観であり、命をかけてこの国のために戦い、未来に思いを馳せて散っていった英霊たちに対し、これほどの侮辱発言、断じて許すわけにはいきません。本日、クレオおおさか東ホールにて開かれる集会は、村山・河野談話を継承し、発展させることが目的なのであります。・・・」

 「反日シンポジウムを粉砕せよーーー!!!(ふんさーーーい!!!)」
 「東アジア青年交流プロジェクト粉砕ーーー!!!(ふんさーい!!!)」

 「赤に染まった国賊どもを叩き出せーーー!!!(たーたきだせーーー!!!)」

いかがでしたか。そして、どう思いましたか。

「・・・これぞまさに、自虐史観であり、命をかけてこの国のために戦い、未来に思いを馳せて散っていった英霊たちに対し、これほどの侮辱発言、断じて許すわけにはいきません。」確かに村山・河野談話自体は「自虐史観」に立脚したものです。しかし「自虐史観」は本当に自虐的でしょうか。誤りはしっかりと認め、謝罪をすることが未来への道しるべとなります。国家によって女性たちがその意に反して連行されて、売春行為を強要されたというのならお互いが納得する着地点を見つけるのが当然でしょう。誰しもが必ずしも国のために戦いたかったわけではありません。残された者たちを思い死んでいった方も多くいらっしゃったでしょう。この主張は、死者を盾にして国家の戦争責任を回避しようとする詭弁でしかありません。むしろ英霊を自らのイデオロギーに利用しようとする、失礼極まりない主張です。

「反日シンポジウムを粉砕せよーーー!!!(ふんさーーーい!!!)」「東アジア青年交流プロジェクト粉砕ーーー!!!(ふんさーい!!!)」「赤に染まった国賊どもを叩き出せーーー!!!(たーたきだせーーー!!!)」「反日」とは何ですか。「赤」とは何ですか。右翼民族派に反対するものは全て「反日」であり、「赤」なのですか。それは結局右翼民族派の妄想でしょう。自らの内にしか存在しない「日本国家」に反対する人間を一方的に排除する国家がどのような国家なのか、それはソ連や北朝鮮や中国の例を出すまでもなく理解できるでしょう。

総じて見るに、右翼民族派の守りたい「日本の誇り」とは一体何なのか、よく理解できないという印象でした。具体的に言えば、それは人としての誇りなのか、国家としての体裁なのか、ということです。右翼民族派は、しばしば戦争に行った人間としての軍人と戦争を主導した国家を一体のものとして扱おうとしますが、それは不可能でしょう。確かに多くの兵士たちは西洋列強に立ち向かい、アジア解放のために戦うと思っていたでしょう。そのためにふるさとに家族を残し、死地に赴かざるを得なかった方々も多くいたはずです。しかし、戦場へ兵士たちを送り込んだ首脳部は必ずしも植民地の解放や大東亜共栄圏の構築を考えていなかったことが数多の資料から明らかにされているのです。個々人によって事情は様々であるにもかかわらず、それを国家の名の下に強引にひとくくりにし、美化するのは戦争の認識を歪めるものです。それをさも日本人の常識であるかのように振りかざしていますが、それは必ずしも国民共通の常識ではありません。また、日本兵の名誉を守るといっていますが、そのためにそれ以外の方々の名誉を切り捨てて良いのでしょうか。従軍慰安婦に関しても、様々な事情を持った方々がいらっしゃると思います。家族を困窮から救うために女衒に売られ、軍に売られた方もいらっしゃったでしょうし、騙されて慰安婦をさせられた方もいらっしゃるでしょう。その方々の名誉はどうなるのでしょうか。従軍慰安婦となった女性は必ずしも朝鮮半島出身の女性だけではありません。フィリピンやオランダなど、その出身は様々です。その方々に対して謝罪し、場合によっては補償をしなければならないのは当然でしょう。物言わぬ死者を盾にして、国家の戦争責任を回避しようというのは卑劣な詭弁としか言い様がありません。

私は従軍慰安婦問題に関しては、あまり多くを語りたくはありません。この問題を議論するときはかなり慎重に言葉を選ばなければならないと考えるからです。むやみに慰安婦を「売春婦」などと下卑た言い方をしない方がよいでしょう。さもなければ論者の人間性を疑われます。

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