この日の演説・シュプレヒコール
「・・・未だに、ありもしない慰安婦問題を再燃させ、少女像を撤去するどころか、釜山に新たに少女像を設置するという、暴挙を行っております。今の韓国があるのは、我が国日本が朝鮮を守り、インフラ整備や、教育、そして、自治に近い統治を行い、・・・生活や、文化を向上させたからであります。恩を仇で返す、これぞまさしくこのことではないでしょうか。・・・韓国政府は、根拠のない歴史問題など、絡めて騒ぎ、歴史を歪曲し、そして捏造した歴史教科書を使って自国民に反日感情を煽り、明確な証拠を突きつけられても、屁理屈を並べて、我が国の領土である竹島に不法に居座り、不法占拠を正当化しております。これは我々日本人が、馬鹿にされ続けて、まだ日本国民は黙っているのでしょうか。嘘をついて正当化する韓国政府を決して許してはなりません。この2月22日は、竹島の日ということを国民は絶対に忘れてはならない。そして、領土意識を高め、我が国固有の領土竹島が返るまで、・・・韓国政府に対して、我々国民が、がっつりとスクラムを組み、徹底的に韓国政府に抗議の声を上げようではありませんか。・・・」
「市民の皆さん、お騒がせを致します。日教組大会があれば必ずこの大音響と交通渋滞、必ずこのようなことになります。皆さん、二度と日教組には、あるいは全教には、会場を貸さないように、市民の良識をもって県に対し抗議をいたしましょう。また本日から明日、明後日と、亡国教師集団が富山にやってきております。我々の左手にある産業展示館にて、政治集会を開催しております。このような政治集会を二度と開催させないように抗議をしなければなりません。」
「韓国政府は、我が国固有の領土、竹島の不法占拠を、止めろーーー！！！（やーめろーーー！！！）」
「韓国は、即刻竹島から、出てけーーー！！！（でーてけーーー！！！）」
「不逞南朝鮮人チェ・ジェイクを処刑せよーーー！！！（しょけーせよーーー！！！）」
「泥棒国家韓国を粉砕せよーーー！！！（ふんーさいーせよーーー！！！）」
いかがでしたか。そして、どう思いましたか。
「未だに、ありもしない慰安婦問題を再燃させ、少女像を撤去するどころか、釜山に新たに少女像を設置するという、暴挙を行っております。」従軍慰安婦問題が「ありもしない」問題でないことは2014年の安倍談話や2015年の日韓合意でも明らかです。右翼民族派は未だに国際社会どころか国内の学者を説得するだけの言語を持たず、軍が直接関与したか、高給をもらって働いていたかなど仲間内でしか通じない議論を繰り返し、ただひたすら朝日新聞が従軍慰安婦を捏造したと喚いています。従軍慰安婦の動員で軍の関与を認めた河野談話やクマラスワミ勧告は否定された吉田証言だけを根拠に書かれたわけではなく、当時の資料や元慰安婦の方に対する聞き取り調査なども十二分に考慮して作られたものであり、クマラスワミ勧告に至っては21年前の時点で朝日新聞が誤報と認めた吉田証言の信憑性に疑義を呈してすらいるのです。そのことを踏まえて、右翼民族派は従軍慰安婦問題で何をしたいのかを考え、他者に訴えるための言語を構築しなければなりません。また慰安婦の少女像は、韓国政府が設置しているわけではなく、政府が強制的に撤去するとなると表現の自由を侵害するという問題を孕んできます。日本政府と同様に韓国政府も国内で難しい立場に置かれていると言えるでしょう。
「今の韓国があるのは、我が国日本が朝鮮を守り、インフラ整備や、教育、そして、自治に近い統治を行い、・・・生活や、文化を向上させたからであります。恩を仇で返す、これぞまさしくこのことではないでしょうか。」当時の韓国（李氏朝鮮・大韓帝国）が日本に頼んだわけではなく、日本にとって都合が良かったからそうしたに過ぎないのではないでしょうか。植民地におけるインフラの整備や教育はおそらく大半の植民地宗主国が行っています。その例としてイギリス統治下のインドやベルギー統治下のルワンダがあげられます。それらは必ずしも現地人のためであったわけではなく、現地人エリート層を創出して自らへの批判をそらすなど、自国の利益に沿って行ったものです。そもそも、このような主張をする者たちの本音としては、様々な右派系のサイトで書かれている通り、「朝鮮人は日本の力があってこそ近代化できた。」「文明的に遅れていた朝鮮人を日本が近代化した」というものでしょう。それは「遅れた野蛮人に文明を教えてあげる」という西洋の「白人帝国主義」の根底にあるものと同質のものではありませんか。もしそうであれば、「大東亜戦争」で日本は「白人帝国主義」と戦い、アジアを解放したなどと主張することは止めていただきたいものです。列国の承認の記述にもあるように、韓国併合時の日本は、ただ「列国」と同じ立場になりたかっただけであり、そこに「東亜解放の精神」など微塵もなかったということですから。
「・・・韓国政府は、根拠のない歴史問題など、絡めて騒ぎ、歴史を歪曲し、そして捏造した歴史教科書を使って自国民に反日感情を煽り、明確な証拠を突きつけられても、屁理屈を並べて、我が国の領土である竹島に不法に居座り、不法占拠を正当化しております。」「韓国政府は、我が国固有の領土、竹島の不法占拠を、止めろーーー！！！（やーめろーーー！！！）」確かに領土問題に関する冷静な対話を決して認めない韓国政府に問題はあります。しかし、すべてが捏造ではありません。先に述べた従軍慰安婦問題も根拠がままあり、過去30年以上に亘って議論が繰り返され、日本政府も国際社会に対しては安倍談話や日韓合意などで従軍慰安婦の徴用に軍の関与があったと認めているのです。しかしながら、一方で未だに朝日新聞の捏造などと大真面目に主張しているのです。韓国は竹島を返還すべきですし、日韓双方に非はあるでしょう。だからこそ、一方的に罵声を飛ばしあうのではなく、お互い冷静に対話しなければなりません。
「これは我々日本人が、馬鹿にされ続けて、まだ日本国民は黙っているのでしょうか（原文ママ）。嘘をついて正当化する韓国政府を決して許してはなりません。」日本人や日本国民が馬鹿にされているのではなく、日本政府が問題解決に取り組めていないのです。時々日本政府が批判されていることを日本人すべてに拡大解釈して憤っている方がいらっしゃいますが、あくまで日本政府と日本人は異なる者です。
「不逞南朝鮮人チェ・ジェイクを処刑せよーーー！！！（しょけーせよーーー！！！）」独島守護全国連帯のチェ・ジェイク代表らがしている行動は意義のあるものと思えませんが、処罰するなら法に基づいた処罰をするべきです。警察権力が何を考えて彼らに張り付いて行動を監視しているのかはわかりませんが、現時点で警察が逮捕などをしないということは処罰する理由がないということなのでしょう。
「泥棒国家韓国を粉砕せよーーー！！！（ふんーさいーせよーーー！！！）」やれるものならやってみてください。おそらく感情的に叫びたいだけで何も考えていないのでしょうが、どのように韓国を粉砕するのか、粉砕した後の処理はどうするのか、ぜひそれらを聞いてみたいものです。仮に粉砕したとしても、その後朝鮮半島の混乱にどう収拾を付けるのか、全く見えてきません。そもそも韓国を粉砕することで得られる利益と韓国と外交関係を保ち続けることで得られる利益とどちらが大きいでしょうか。おそらく関係を維持して経済的・文化的交流を進めたほうがコストもリスクも少ないですし、利益を出せます。破滅的でくだらない主張を行うべきではありません。
総じてみると、まだまだ右翼民族派や「行動する保守」から韓国に対する侮蔑心がにじみ出ています。まるで日本が存在しなければ韓国が存在しえないような主張がありますが、彼らの韓国像は現代の日本と重なります。北朝鮮のミサイルに怯え、アメリカのトランプ大統領に必死で媚を売る自民党安倍政権はまさにアメリカが存在しなければ存在しえない日本像を体現しているといえるでしょう。韓国国民が朴槿恵（パク・クネ）大統領を非暴力で辞任に追い込んだことは評価に値します。日本が韓国から学ぶことは少なくないように思えるのです。韓国への侮蔑の一方で、右翼民族派の中で自民党安倍政権への失望が見え隠れします。従軍慰安婦の徴用に日本軍が関与したことを認めた日韓合意は右翼民族派に自民党安倍政権への少なからぬ失望を与えました。また今年も独島守護全国連帯の活動家が来日し、大阪入国管理局が入国を許可したこと、首相就任から5年近く経ちながら、公約に掲げていた竹島の日を未だに制定しないことも右翼民族派を苛立たせています。今年5月から韓国大統領が朴槿恵から文在寅（ムン・ジェイン）に変わり、国連から日韓合意を見直すように勧告を受けるなど、日韓関係を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。不透明化する今後の竹島問題や歴史問題の推移は目が離せません。
「行動する保守」によるデモ行進では、主催者の努力のためか差別言動はほとんど発せられませんでした。それでも多数のカウンターが監視し、「行動する保守」の一挙手一投足に対し罵声を浴びせかけ来るのです。一見カウンターの罵声は理不尽なもののように思えます。しかし、独島守護全国連帯に対する抗議活動を見る限り、「行動する保守」に関わる人間から完全に差別意識が払拭されたとは言えません。そのためカウンターの活動は今後も必要となるでしょう。かつての差別主義者たちが信用を築き上げるのは茨の道となりそうです。