福田内閣退陣、麻生内閣発足

91日、福田康夫内閣総理大臣が辞意を表明しました。理由は首相自身ねじれ国会による議会運営の行き詰まりと言いました。辞意表明の記者会見で記者会見が他人ごとのようだ、自民党政権に与える影響をどのように考えているのかと質問してきた記者に対して、「他人事のようにというふうにあなたはおっしゃったけれども、私は自分自身を客観的に見ることはできるんです。あなたと違うんです。」というなど、苛立ちを隠せないようでした。

2007926日に発足した福田康夫内閣は多難の1年を送りました。5000万件以上の個人の特定できない年金問題やサブプライムローン問題などによる経済の混乱、それに伴う物価の高騰、食品偽装や中国製食品の問題など問題が山積し、しかも衆議院では自由民主党が過半数を占め、他方参議院では野党が過半数を占める「ねじれ国会」の状態でのスタートでした。一時は民主党との大連立構想も持ち上がりましたが決裂し、民主党の小沢一郎代表とともに密室政治と非難されました。その後も「ねじれ国会」において政策の審議が難航し、国民の支持率も落ちていきました。81日に内閣改造が行われ、「安心実現内閣」を自称しました。815日に安岡興治法務大臣、太田農林水産大臣、野田聖子消費者行政担当大臣の3人が靖国神社に参拝しましたが、福田首相自身は参拝しませんでした。そして、1が月ほどで福田首相は政権を投げ出すことになりました。

私から見れば、福田首相は不運であったと言わざるを得ません。福田内閣はお友達内閣と言われる所以なのか、規律が厳しくない印象を受けました。そして安倍晋三内閣と同じように防衛省や農林水産省などの中央官庁の汚職や閣僚の放言・失言、中国問題や朝鮮民主主義人民共和国の問題に悩まされてきました。もともとその場しのぎのための内閣であった側面もありましたし、突然の首相辞任に怒りだけでなく憐れみすら感じてしまいます。

さて、麻生太郎内閣はどうでしょうか。910日から行われた自由民主党総裁選挙は5人の候補が立候補するという表面的には熾烈な戦いになりそうでした。しかし、その実は最初から麻生太郎幹事長の独走状態が続きました。そして922日、圧倒的な大差で他の候補を抑え第23代自民党総裁となり、924日には第92代内閣総理大臣に指名され、麻生太郎内閣が組閣されました。今回の自民党総裁選挙は麻生太郎幹事長の独走のため盛り上がりに欠ける総裁選挙となりました。そもそも、総裁選挙に出馬した候補は経済政策の面では差がありますが、それ以外の面ではあまり差がありません。このような人ばかりの選挙では経済政策以外の政策論争が活発になりません。議論が活発にならないことは面白くありませんし、自民党にとっても注目を集められず不利となるはずです。

麻生太郎総裁は安倍晋三首相と同じように元首相を祖父に持つ政治家です(安倍晋三首相の祖父は岸信介元首相、麻生太郎総裁の祖父は吉田茂元首相です)。二人ともそれぞれの祖父のように、アメリカにひたすらつき従いアジアを突き放す外交を行なっています(従軍慰安婦の問題ではどちらにも反発していますが)。そして二人とも熱烈な靖国神社の崇拝者です。ただの崇拝者であるだけならば別に問題ではないのですが、政治家という立場で崇拝者として振る舞うことは政教分離の原則に反します。私は麻生太郎首相が積極的に靖国神社に参拝して政教分離の原則が骨抜きにされることを危惧します。そして小泉純一郎内閣の時のように少なくとも韓国と中国との関係が再び悪化するのではないかと危惧します。私は、麻生太郎首相による「天皇が靖国神社に参拝すべきだ」などに代表されるような数多の放言・失言を忘れません。そしてこのような方言・失言は繰り返される可能性は低くありません。

また、麻生太郎内閣の閣僚を見てみますと、全く新鮮味が感じられません。なぜならば閣僚が麻生太郎首相と思想的に似たような人(中川昭一財務大臣、鳩山邦夫法務大臣など)や、保守政治家や大物政治家の子孫が多いからです。例えば、浜田靖一防衛大臣は自民党の浜田幸一元衆議院議員(通称「ハマコー」)の息子、中曽根弘文外務大臣は中曽根康弘元首相の息子、史上最年少の閣僚となった小渕優子少子化問題担当大臣は小渕恵三元首相の娘です。若手と言われる閣僚でも、年老いた政治家、今は亡き政治家が新たな肉体に生まれ変わっただけという印象を受けました。日本の民主主義はいつから血族主義がまかり通るようになったのでしょうか。安倍晋三内閣や福田康夫内閣以上に縁故主義的で復古主義的な内閣であると考えます。

野党はすでに近いうちにあると言われている衆議院の総選挙に対する準備に勤しんでいます。麻生太郎首相やその内閣も衆議院の総選挙を意識していました。あまり期待はしていませんが、とりあえず麻生太郎内閣がどのような政策を進めるのか、そしていつあるのか分からない衆議院総選挙がどのような結末を迎えるのか、その結果日本史上最短の内閣となるのか、はたまたそうではないのか、見守ることにしましょう。

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