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文化の日 ―その源流とは―

すでに多くの方がご存知かもしれませんが、この日は文化の日です。日本国憲法

が公布された日として平和と文化を大切にする記念日とされました。この日、文化

勲章・文化功労章の授賞式が行われます。しかし、日本国憲法が制定される前から、

この日は祝日でした。

 文化の日となる以前は、1927年から「明治節」とされました。この日は何の日か

と言いますと、嘗ての明治天皇の誕生日です。明治維新を成し遂げた明治天皇を名君

として讃え、明治の劇的な変化を遂げた時代を残そうとしたのです。今でもこの日を

明治節として活動を行っている右翼団体も少なくありません。

明治時代は激動の時代でした。「富国強兵、殖産興業」の名の下に社会が封建的な

体制が残したまま、急速に近代化(西欧化)しました。その結果、西洋の人々から見

ても奇妙にしか見えない日本独自のいびつな体制が出来上がりました。その中で自由

民権運動などの政治運動や、環境問題や労働問題など現代とあまり変わらない問題が

出現しました。対外的には「脱亜入欧」を目標として不平等条約の改正に力を入れ、

1894年の日清戦争や1904年の日露戦争などを戦って、一時はアジアに植民地解放の

希望をもたらしますが、日本が中国進出や韓国併合など大陸進出を始めると失望され

ます。こうしてアジア諸国を見下しながら欧米に羨望と劣等感を抱く近代日本の基礎

が完成したのが明治時代です。

 1947113日、大日本帝国憲法を改正する形で日本国憲法が公布され、明治節

1948年に廃止され、文化の日に取って代わります。こうして113日は天皇誕生

日(天長節)から憲法記念日に近いものとなりました。公式には明治節と文化の日は

関係がないそうですが、日本国憲法を公布した日に明治節である113日を選んだ

ことは作為を感じさせます。しかも制定にあたって当時の国会では明治時代を永久に

偲びたいというという答弁が行われたそうです。ここからも、祝日にまつわる歴史が

読み取れると言ってよいでしょう。

 最近、体育の日と文化の日と勤労感謝の日を移動させて連休を増やそうとする構想

があるそうですが、祝日の本来の意味を失う可能性があるので、私は歓迎しません。

休日を増やしたいという安易な発想で祝日を変更することはいかがなものでしょうか。

考えものです。

そして、日本国憲法に掲げられた平和と文化は今後守られるのでしょうか、それとも

壊されるのでしょうか。

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