東日本大震災

 311日午後246分、三陸沖の太平洋を震源とするマグニチュード9.0の地震が起き、地震・津波などで東北・関東地方で未曾有の被害をもたらしました。確認された死者・行方不明者は27千人を超え、避難生活を送っている人も日本全国で16万人を超えています。

 この地震により福島第一原子力発電所の送電設備が損傷を受け、自家発電装置も津波により故障しました。これにより燃料棒の冷却ができなくなり、1号炉〜4号炉では冷却水から発生した水素により水素爆発が起こり、建屋が損壊しました。炉心は自衛隊による海水散布作業、消防による放水、そして炉心への海水注入などによって反応の暴走は一応鎮静化されましたが、圧力容器の損傷により2号炉からはセシウム137、ヨウ素131、果てはプルトニウムなどの放射性物質が原発排水中に、ひいては環境に漏出する事態になっています。412日にはチェルノブイリ原発事故に続いて2例目となる原発事故としては国際原子力事象評価尺度(INES最悪の水準レベル7」に指定されました。

 今回の震災では阪神淡路大震災の経験もあり、国内観測史上最大の地震にもかかわらず地震そのものによる被害は阪神大震災に比べて少ないようです。しかし、想定を超える津波により東北沿岸に甚大な被害が出ました。そのため自治体そのものが機能していない場所もあり、約10万人が動員された自衛隊や世界各国からのボランティアが活躍しています。

 一方、政府は混乱しています。菅直人内閣の支持率が低迷する中で、支持率回復のために何とか「政治主導」を現出しようとしているようですが、それがかえって震災の現場を混乱させているように見えます。菅直人総理大臣は福島第一原発事故の対応に追われている東京電力の本社に行き、社員を怒鳴りつけたようですが、そのようなことを震災後の早い段階で菅直人総理大臣がする必要がありません。国会にしても、民主党からの入閣要請を自民党が断っているところや、民主党内の小沢一郎議員に近い議員たちが菅直人内閣への反発を強めているところから、政局よりも被災地復興を、という言葉とは逆の状況が進行しているように思えてなりません。政治家の誰もが、この震災を機に政局の主導権を握ろうと躍起になっているように見えます。

 福島第一原発の問題では、まず地震や津波に対する備えが十分ではありませんでした。数年前に津波に対する脆弱性が指摘されていたにもかかわらず、東京電力はこれを改善しようとしませんでした。さらに悪いことに、自家発電装置などの重要な設備のほとんども原子炉建屋の周辺に配置されていました。これでは被害が甚大になりやすいのです。その上、炉心の冷却設備が止まってからの海水注入などによる冷却が遅れました。これは状況判断を誤った東京電力や政府の責任が大きいでしょう。すでに福島第一原発から放出された放射性物質は原発から半径30キロの自主避難勧告地域より外で検出されています。おそらく事態は政府の発表より深刻です。原発の周囲は少なくとも数年は汚染されたままでしょうし、原発の冷却作業に参加した自衛官や消防隊員、引き上げられた被曝線量限界のもとで作業を行った作業員に何らかの健康障害が出る可能性は大いにあります。そのフォローを東京電力や政府はできるのでしょうか。そもそも、マスコミなどでしばしば原発に関して「安全神話」などという言葉が聞かれますが、科学技術に絶対「安全」などあり得ません。人間のすることだからという以前に、科学では「絶対」という事象はありません。科学技術の「安全」というものは不断の努力によって作られるものであり、そのことを無視してひたすらに「安全」を説き続けた人がいたとすれば、その人の罪は大きいでしょう。

 右翼民族派や左翼も被災地に支援物資を送ったり、募金を集めたり、ボランティア活動をしたりするなど様々な支援活動をしています。思想の如何を問わず復興のために尽力することはごく普通のことです。私も微力ながら募金などで協力していく次第です。

 最後に、今回の震災で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。そして被災地の復興を心よりお祈り申し上げます。

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