参議院選挙の結果を捉えて

 710日、参議院選挙の投票が行われました。改選121議席のうち、自民党が56議席、公明党が4議席を獲得し、与党が参議院の過半数を占めました。おおさか維新の会も7議席を獲得した一方、民主党は34議席を得たにとどまり、前回より議席数を減らしました。社民党と生活の党に至ってはそれぞれ1議席を得たに過ぎませんでした。共産党は改選前から議席を増やし、6議席を得ました。これにより憲法改正に賛成する政党が占める参議院の議席は全議席3分の2を超えました。

20歳未満の若者の4割が自民党に投票したことを野党は重く受け止めるべきです。自民党はそこまで読み切って投票年齢を引き下げたと考えてよいでしょう。与党を攻めきれなかった野党連合は改憲阻止を標榜していましたが、自民党による改憲と制度としての憲法改正を混同し、民進党まで護憲を打ち出したため、反自民党の改憲派の支持を集められなかったのではないでしょうか。おおさか維新の会が議席を増やしたことにそれが現れていると感じます。護憲派の私が言うのも難ですが安倍政権打倒のための野党共闘であれば「護憲」より「法の支配」擁護を打ち出し、改憲派を取り込める選挙戦を展開すべきでした。野党連合がSEALDsなどの支持を当てにしていたというのならば、それは愚かです。ネット右翼の支持を当てにして議席を失った次世代の党と同じ失敗を繰り返しています。野党は各候補者の当落に一喜一憂せずに、現状に危機感を抱くべきでしょう。

投票率は54%と戦後4番目の低さでした。選挙人の年齢を18歳以上に引き下げたところで日本国民に渦巻く政治不信は拭い去れないほどにまでに悪化しているとみられます。与党が労働者にほとんど縁がないアベノミクスの宣伝と何の生産性もない野党批判をするだけで安定的に議席を確保できる現状に、国民は政治にもはや何も期待していないのではないかとすら思えます。民主党政権の惨状から国民は変化を恐れるようになっています。野党は誰が統治しても一緒という観念を拭い去ることができませんでした。しかし、沖縄選挙区では島尻安伊子沖縄北方担当大臣が、福島選挙区では岩城光英法務大臣がそれぞれ落選していることから、安倍政権への不満は確実に存在しているといえます。

今回の選挙結果から、法の支配も憲法の存在意義も理解していない者たちが独りよがりな日本精神論に憲法改正を行う可能性が大幅に高まりました。国民は今一度、劉暁波氏の08憲章とナチス政権が当時最も民主的と言われたヴァイマル憲法下で誕生したことを思い起こすべきです。国民は国家権力の暴走を監視し、それを食い止めることができるのです。国民は国家権力に支配されるだけの無垢な子供ではありません。国家の主権者なのです。

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