衆議院の解散・総選挙を捉えて

  1022日、第48回衆議院総選挙の投開票が行われました。自由民主党は283議席、公明党は29議席を獲得し、選挙前より議席をわずかに減らしました。立憲民主党は55議席と大幅に議席を増やし、野党第一党になりました。希望の党は50議席とわずかに減らし共産党は12議席と半減しました。いずれにせよ、与党で議席の3分の2を占める結果となりました。

噴出した数多くの疑惑やスキャンダルは与党の議席に大したダメージを与えることなく、またしても野党同士で議席を奪い合うこととなってしまいました。自民党安倍政権への批判だけではもはや有権者は動かないかもしれません。希望の党は政権交代を訴えるのみで、自民党との明確なビジョンの差を示すことができませんでした。野党は将来の政権交代を見据えて安倍政権を打倒した後にどういった理想のもとにどのような政策を推し進めたいか明確に示さなければなりません。その点で今回、希望の党から党公認を目の前にぶら下げられた民進党の右往左往ぶりは目を覆いたくなるばかりです。民進党が合流する方針が決まってから、希望の党の公認を得て立候補した民進党の候補者たちは安保法に反対したことをとぼけました。その後議席が減少する予測が出れば候補者たちが小池代表に「騙された」と文句を言う始末です。理念も何もなく、ただ議席にしがみつきたいようにしか見えない者たちの行動には呆れるばかりです。今回の選挙結果を見て民進党の前原誠司代表は希望の党との合流を見合わせるとしていますが、いまさら宣言したところで、もはや元の支持層は戻ってこないでしょう。

また、今回の投票率は53.6%と、前回よりわずかに増えたものの、台風の影響もあり戦後2番目の低さとなりました。投票に行く有権者が増え、投票率が上がれば政治はいくらでも変えることができます。しかし、有権者が投票で拓ける未来を見出せないならば、投票率は低いままです。野党の議席が増えない理由をいくら不正選挙や小選挙区制に求めようが、現状多数派に有利なこの制度で戦うしかないのです。自分たちに有利な現行選挙制度を与党が変えるわけがありません。与党の硬直化、野党の四分五裂の現状を見て政治に何かを託したいと思えなくなりそうですが、それでも何もしなければ何も変えられないのです。

自民党安倍政権は今回の選挙結果を以て、「信任を得た」というのでしょうが、この結果は自民党安倍政権への白紙委任状ではありません。多くの世論調査で、安倍晋三内閣の支持率は不支持を下回っています。森友学園や加計学園などを巡る数々の疑惑も依然として全貌が明らかにならないままです。こちらも多くの世論調査により納得していない国民の方が多いことが分かっています。与党は今回の選挙結果を禊ぎなどと思わないことです。ましてや憲法改正などしている場合ではありません。野党は政権奪取のために理念や政策を整えるべきですが、あまり熱心な活動家に接近しすぎないほうがよいでしょう。国会議員には国会議員のすべきことが、活動家には活動家のすべきことがあります。活動家は特定の政治家や政党に依存しないことを心がけるべきです。民主党・民進党の失敗を繰り返してはいけません。正直に言えば小池百合子東京都知事率いる希望の党は期待できませんし、立憲民主党も希望の党に合流しようとした阿部知子衆議院議員が合流しているなど不安だらけです。憲法改正まで時間がありませんが野党は慎重に、そして着実に基礎を固めなければなりません。

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