鳩山由紀夫内閣退陣・菅直人内閣発足

 62日、民主党の鳩山由紀夫内閣総理大臣が辞意を表明し、鳩山由紀夫内閣は総辞職することになりました。同時に、小沢一郎民主党幹事長も辞任することとなりました。「歴史的政権交代」による政権は在任期間8ヶ月半の短命政権に終わりました。

 去年830日の衆議院総選挙で民主党が圧勝し、鳩山由紀夫内閣は、その中で、国民新党、社会民主党と連立を組んで発足しました。鳩山総理大臣は10月の臨時国会の所信表明演説で、「命を大切にする政治」を強調しました。その主張に沿って、公立高校の授業料無償化、子供手当の支給などの政策を実行しました。

中でも最も特徴的だったのが、「事業仕分け」でしょう。「事業仕分け」はその議論を全てマスコミに公開することで独立行政法人や公益法人の実態を露呈させることに成功し、財政の無駄削減というポーズをとることに成功した一方で、さほど財源の捻出にはつながらなかった(6000億円ほど)こと、廃止・削減対象の法人(特に科学技術や芸能・文化・スポーツ関係)からの抗議を受けたことが話題となりました。

しかし、一方で、高速道路料金の無料化は実現しないこととなりました。それどころか料金が一部値上げされることとなり、これには民主党内からも批判が噴出しました。宮崎県の家畜伝染病である口蹄疫流行の際には初期対処の遅れも問題となり、責任を追及されました。

さらに鳩山由紀夫総理大臣、小沢一郎民主党幹事長の政治資金問題に加え、小林千代美衆議院議員の教職員組合からの不正資金問題も浮上し、鳩山由紀夫総理大臣の元秘書、石川知裕衆議院議員を含む小沢一郎幹事長の元秘書、小林千代美衆議院議員の会計責任者が相次いで逮捕され、有罪判決を受けました。これにより石川知裕衆議院議員が辞職しました。鳩山由紀夫総理大臣は不起訴処分とされ決着しましたが、小沢一郎幹事長については検察審査会で現在も起訴するかどうかの議論が続いています。

こうして追い詰められていく鳩山由紀夫内閣にさらに追い打ちをかけたのは、アメリカ軍の普天間基地移設問題でした。当初民主党はマニフェストで宜野湾市普天間のアメリカ軍基地を「最低でも県外」に移設するとしていました。しかし、移設先が見つからず、やがて県内への移設が選択肢に入っていき、ついに今年5月に、沖縄各地で基地移設反対運動が行われる中で従来の方針である名護市辺野古に移設されることが決定されました。基地機能の一部移設先となった鹿児島県徳之島でも島民の半分以上が参加する大規模な反対集会が行われました。この状況の中、基地の県外・国外移設をあくまで主張する社会民主党が遂に連立を離脱し、野党となりました。この事態に、民主党内から公然と鳩山由紀夫総理大臣の辞任を求める意見が出ていました。

鳩山由紀夫内閣は、政権交代を成し遂げた内閣として、支持率72%で発足しました。しかし、閣僚の思想の幅広さ(社会主義政党の末裔から日本会議所属の保守派まで)から次第に閣内・党内の意見対立、公約違反、利権政治や旧態依然とした党運営体制が露呈し、ついに支持率が20%を下回り、総辞職しました。鳩山由紀夫総理大臣はリーダーシップを期待してはいませんでしたし、閣内の意見の一致がありうるとは思っていませんでした。普天間基地移設問題にしても、移設先の住民とアメリカ政府との板挟みとなって苦しんだのでしょうが、公約を守ることよりもアメリカ政府との約束を優先したことに沖縄県民どころか有権者が憤りを覚えるのは当然のことです。各種世論調査で基地を県議撤去すべきという意見が多かったのでそうすべきであったのです。また、政治資金問題に対して最後まで納得のいく具体的な説明がなかったことも有権者の不信を募らせた原因の一つでしょう。国内の意見をまとめきれず、全てに見捨てられて、鳩山由紀夫内閣は惨めな最後を迎えることとなったのです。

後任の菅直人内閣総理大臣は恐らく前政権以上の茨の道を歩むこととなるでしょう。自民党からみんなの党に続き、立ち上がれ日本、日本創新党、新党改革などの政党が分裂し、政局が混迷する中で、これから参議院選挙まで、どのような人物がどのような行動に出て、それがどのような影響を及ぼすか、注視する必要があります。

(以下610日追記)68日に菅直人内閣が正式に発足しました。鳩山由紀夫内閣からの閣僚が17人中11人留任することになりました。このことからも、すぐに国会や目下の問題に継続して対処できるようにした内閣であるといえます。また、行政改革担当大臣に「事業仕分け」で注目を集めた蓮舫参議院議員を起用し、菅直人総理大臣は「奇兵隊内閣」を自称するなど、若さと行動力をアピールする内閣となっています。一方、小沢一郎前幹事長の政治資金問題については、幹事長辞職をもって「けじめ」としました。しかし、野党はこの一連の動きを小沢一郎前幹事長の問題を隠すためのものとして攻撃を始めました。また、就任直後より荒井聡国家戦略担当大臣の事務所費不正処理疑惑も浮上しています。新しい内閣は困難を抱えた発足となりそうです。来月の参議院選挙の結果次第では惨敗の責任をとって総辞職ということもあり得ます。自由民主党の谷垣禎一総裁も参議院選挙に惨敗すれば総裁を辞任することを示唆しています。菅直人代表と谷垣禎一総裁、政策においてどちらが国民の支持を得て笑い、どちらが辞職することになるのか、注視していく必要があります。

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