愛国心はならず者の最後の砦

 安倍晋三内閣において、大きな汚職疑惑が沸き起こっています。教育勅語を幼稚園児に暗証させている塚本幼稚園を運営する森友学園に対して「瑞穂の国小学院」建設のために国が大阪府豊中市の国有地を評価額よりも遥かに低い価格で払い下げたことが問題になっています。ほかにも小学院の名誉校長として安倍昭恵総理夫人が就任する予定であったこと、「安倍晋三記念小学院」の名で寄付金を募っていただけでなく、昭恵夫人を経由して安倍総理大臣から100万円の寄付を受けていたこと、国や豊中市、大阪府にそれぞれ異なる運営予算を提出していたこと、大阪府が小学院開校のために設立認可にあたって不当に便宜を図っていたこと、園児に対する異常な安倍総理大臣礼賛教育、園児たちに対する虐待とも呼べる扱い、抗議した保護者に対するデマを含んだ民族差別的な言動など、次々と問題が明らかとなっています。323日に籠池泰典前理事長の証人喚問が行われましたが、籠池前理事長は昭恵夫人を介して国有地取得に関して口利きを行ったこと、国有地取得において政治の関与があったことを認めました。一国の総理大臣の影響のもと国家が私立の学校法人に利益供与を行ったという一大疑惑に発展しています。

 「愛国心はならず者の最後の砦」という政治学者サミュエル・ジョンソンの言葉がありますが、今回の問題の本質を言い当てていると言えるでしょう。日本会議のメンバーである安倍総理大臣も、籠池前理事長も愛国の名のもとに国政を私物化していたと言えるでしょう。更には森友学園に感謝状を出し(現在は撤回)、顧問弁護士を務めていた稲田朋美防衛大臣とその夫、森友学園の教育方針を絶賛していた竹田恒泰氏や櫻井よしこ氏などは森友学園という角砂糖に群がる蟻のようです。ここまで来るともはや愛国という名の利権です。利権であるがゆえに疑惑が表面化した際の切り捨て方は実に冷酷です。

 同時に、一連の問題から公教育に愛国を持ち込む者たちが目指す教育の片鱗が伺えます。子供の人格権を認めず、子供はただ大人の言うことに疑問を差し挟まず黙って従っていればよいとする姿勢はこの森友学園だけではなく、右翼民族派、並びに保守派にも共通しています。これでは子供の「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成(教育基本法第1条)」は行えず、大人にとって都合の良いだけのロボットしか生み出されません。大人の身勝手な自己満足です。しばしば教育勅語に書かれている徳目は道徳として否定されるべきものではないという意見があり、安倍内閣も教育勅語を教育の場で用いることは問題ないという閣議決定を行いましたが、そもそも教育勅語は日本を開闢した天皇(皇室)から臣民(国民)に下された言葉であり、そこに書かれている基本的な道徳(親兄弟や友人を愛する、法を守るなど)は皇室を守ることに従属するものとされています。したがって現代の国民主権の原則に相容れません。基本的な道徳を教えるのであれば教育勅語でなくとも事足りるのです。ましてや安倍晋三総理大臣を「日本を守ってくれる人」などと教えるのは指導者の個人崇拝を強要する北朝鮮などの独裁国家と何も変わりません。

更には子供を国民に、大人を国家権力に置き換えれば現在の自民党安倍政権にも同じことが言えます。特定機密保護法、安保関連法、そして現在国会で審議されている「共謀罪」など、これまでの自民党安倍政権の政策には国家権力に国民は従属しなければならないという姿勢が明確に現れています。国民は国家の捨て石となるために存在しているのではありません。国民、さらに言えば人間がその国に存在してはじめて国家は成り立つのです。ましてや国民は政治家の所有物ではありません。

 自民党安倍政権が長期化するにつれて、腐敗・堕落したその内情が次々と露呈しています。第二次安倍内閣以前ならば内閣総辞職が必至な情勢になるはずなのですが、内閣総辞職どころか問題の張本人が居直る状況を許してしまっているのが現状です。「他の政党が信頼できないから」という理由で安倍政権を野放しにできる猶予など最早ありません。一連の問題が発覚するにあたり籠池泰典前理事長は理事長を辞任し、「瑞穂の国小学院」の設立認可は見送られました。安倍内閣は籠池泰典前理事長ら刑事告訴を検討するなど森友学園関係者にすべての責任を押し付けて強引に幕引きを図ろうとしていますが、昭恵夫人や当時国有地を管轄していた迫田英典元近畿財務局長(現国税庁長官)が公の場で真実を語らずして幕引きはできません。昭恵夫人は総理夫人であって、私人であるという閣議決定がなされましたが、公務でない私用の出張費を公費で賄い、それに警備や内閣府の職員を同行させる昭恵夫人を誰も私人だとは見做さないでしょう。むしろ私人であると強弁して利益供与という批判を避けようとしている向きすらあるのです。安倍政権による強引な幕引きを良しとせず、野党のみならず、国民の総意でこの問題を追及し、愛国を隠れ蓑にする「ならず者」たちにしかるべき法の裁きを与えなければなりません。

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