菅直人内閣退陣・野田佳彦内閣発足

 826日、赤字国債特例法案が成立したことを受けて、菅直人内閣総理大臣が辞意を表明しました。これにより東日本大震災の復興など様々な問題を残したまま発足から約12か月で菅直人内閣は退陣することとなりました。

菅直人内閣の在任中、日本は立て続けに大問題に直面しました。発足直後の参議院選挙では民主党が大敗し、ねじれ国会が再び現出されました。去年の9月には尖閣諸島沖で巡視船と中国漁船の衝突事件が起こり、日中関係が悪化しました。さらに逮捕した漁船の船長を処分保留のまま釈放したため、野党からの格好の攻撃対象となりました。またロシアのメドヴェージェフ大統領が北方領土を訪問し、ロシアとの関係が悪化しました。今年になってから自民党の国会議員3人が韓国ウルルン島を訪問しようとして阻止されるなど竹島をめぐって日韓関係が悪化しました。野党は中井洽衆議院議員や前原誠司前外務大臣の問題などをすぐに拾い上げて攻撃材料としました。その中で、民主党側も野党に歩みより、子供手当ての廃止など公約を改変するようになりました。今年311日、東日本大震災が発生し、関東、東北に甚大な被害をもたらしました。また、この地震により福島第一原発が被害を受け、深刻な放射性物質の漏出が起こりました。菅内閣はそれなりに対処しましたが、どうしても対応が遅れがちになりました。結局赤字国債特例法の成立とともに退陣となりました。菅直人内閣は元々あまり有能でない上に様々な事案が起こり、とても苦労したと言えるでしょう。
 民主党代表選挙では知名度の高い前原誠司元代表や小沢一郎元幹事長の支持を受けた海江田万里元経済産業大臣の他4人の候補を破った野田佳彦前財務大臣が民主党の代表となり、内閣総理大臣となりました。そして92日、野田佳彦内閣が発足しました。野田総理大臣はA級戦犯が全て悪いわけではないと発言し、韓国や中国から「極右」として警戒されています。一方で、小沢元幹事長の派閥に属し、日教組出身の輿石東参議院議員を幹事長に起用し、かならずしもそうでない部分を見せました。この様子を見ていると、民主党内の混乱に乗じて小沢一郎元幹事長がその影響力を再び増大させようとしているように思えます。野田総理大臣自身も、党内の対立をこれ以上広げないように腐心しているように見えます。しかし、そもそも思想哲学のかなり違う人間の集まりである民主党で党内融和は困難を極めるでしょう。野田総理大臣はまたも短命に終わりそうです。

野田佳彦内閣は「ドジョウ」と言われるだけあって奇抜な人選はほとんどなく、地味な顔ぶれとなりました。それでも支持率が60%を超えるのは末期の菅直人内閣への失望から生じる期待感でしょう。その期待がいつ失望に変わるかはわかりません。しかしその政治手腕はまだまだ未知数です。そして東日本大震災からの復興に関する諸問題など目下取り組むべき問題は山積しています。今後行う政策を見てどのような内閣となるか判断させていただくとしましょう。もっとも、すでに野田総理大臣自身をはじめとする政治資金問題や鉢呂吉雄経済産業大臣の失言問題が早速浮上し、期待が失望に変わるのももはや時間の問題である気がしますが。

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