朝鮮半島問題

 2008年に入って朝鮮半島をめぐる状況が急展開しています。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が核開発計画を申告してきました。同時に北朝鮮北部寧辺の黒鉛炉の冷却塔を爆破しました。今6カ国協議で核開発の申告の内容が検討されています。アメリカ政府は申告内容が正確であれば北朝鮮へのテロ支援国家指定を解除するとしています。日本政府や韓国政府も同意しようとしています。一方で子供や兄弟を北朝鮮工作員に拉致された拉致被害者の家族は、テロ支援国家指定解除に反対しています。ある意味でここは大きな分岐点です。誠実な対応をしたことがわかってぐっと国交正常化などの協議が進むか、嘘とわかって再び孤立するかです。今後の動きが気になるところです。

 核開発問題は1990年代にまでさかのぼります。1994年には北朝鮮がプルトニウムを生成したとしてアメリカ軍が北朝鮮爆撃を検討したほどでした。その後の米朝交渉が始まり、2003年に6カ国協議が始まり、今も議論中です。また、日本人拉致の問題も、2002年の日朝首脳会談で日朝共同宣言が採択されてからも残りの拉致被害者の行方について議論がまとまらず、進展が注目されます。

 私は日本政府そして拉致被害者を救いたいと考えて政府を頼りにする人が何を考えているのか時々分からなくなることがあります。200677日、朝鮮人民軍がスカッドAやノドン、テポドン2などのミサイルを発射し、日本政府は経済制裁を発動し、109日には北朝鮮が核実験を行い、国連の制裁決議が議決されました。国内では右翼団体が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)に対し抗議を行い、拉致被害者の家族はことごとく経済制裁を支持しました。このことに私は親の子を思う気持ちここに極まれりと思いました。何がどうしても家族を救いたい、そんな気持ちがあふれていたのでしょう。それは親として当然であり、その気持ちは察するに余りあります。しかし、その心に北朝鮮国民が飢える姿や、もしかしたら自分の家族が経済制裁で死んでしまうかもしれないという考えはあったのでしょうか。あったのなら経済制裁を支持しないし、ギリギリのところでその気持ちを押し殺しているだけかもしれません。ただ政府やその他の人に都合のよいように利用されているだけではないかと思えてきます。

 私も1人の日本国民ですから、拉致被害者の方にはぜひ生きていてほしいし、生きて帰ってきてほしいと思っています。しかし、拉致被害者は死んでいる確証もなければ生きている確証もないことを常に考える必要はあると思いますし、生きている場合は一度北朝鮮体制が崩壊して無秩序状態になればその声明を危うくする可能性もあります。今の日本のひたすら北朝鮮に対する敵意をあおりたてる風潮には甚だ疑問を感じます。そこで北朝鮮に対する敵意ではなく、韓国がそうであったように、ある程度北朝鮮に対して友好的なムードを作るべきではないでしょうか。そうすれば議論は活発になると思います。

 私は横田めぐみさんを題材にしたアニメ「めぐみ」を観ました。内容にあまり触れないようにしますが、率直にいえば少し感傷に浸りすぎという印象を受けました。めぐみさんが拉致された時何を思ったか、拉致を実行した人がどんな人であるか根拠がよくわかりませんでした。そのような現時点で調べようのないことを描写した時点ですでにドキュメンタリーではありません。また、北朝鮮政府の事情を描写していないため、政治的公平性に欠けます。真実の究明と言うよりは、いかに被害者一家の幸せを北朝鮮政府が残虐に奪ったかが描かれていたような気がしました。あまりにも被害者が神聖化され過ぎているような気がしました。これは「ドキュメンタリー」とは言わずに「プロパガンダ」と言うのではないか、と思いました。このアニメでアテレコを担当した声優の皆さまもボランティアで出演しているなど、このアニメの製作に携わっている方々の拉致問題に関する想いは痛いほど理解いたします。しかし、このアニメを製作して、放映したら拉致問題は解決するのでしょうか。日本政府のできること、すべきことはもっとたくさんあるはずです。私たちは日本政府に拉致問題の解決に向けての行動を強く求めなければなりません。

 最後に拉致被害者の生存と朝鮮半島の平和を心よりお祈り申し上げます。

戻る

inserted by FC2 system