サミットをとらえて

 77日、サミット(主要国首脳会議)が北海道洞爺湖町で行われました。G8(日本、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、イタリア、ロシア、ドイツ)とEUの他に中国やインド、アフリカ諸国も参加しての大きなものとなりました。そして二酸化炭素削減を主とする環境問題やアフリカの貧困問題、原料価格の高騰、拉致問題などについて話し合われました。一方札幌市内などでは、反グローバリズムを掲げる外国の市民団体や一部の左、右翼団体によるサミット粉砕を掲げた抗議行動が行われました。

 サミットは果たして成果はあったと言えるのでしょうか。私としてはあまりあったようには見えません。議長総括を読んでみるとあまり数値目標がないのです。「決意する」や「努力する」というような表現が多いように思えました。今年の洞爺湖サミットに限りませんが、このような表現ばかり並んでいるサミットの議決にあまり力があるように思えないのです。例えば、「我々は、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%の削減を達成する目標というビジョンを、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のすべての締約国と共有し、かつ、この目標をUNFCCCの下での交渉において、これら諸国と共に検討し、採択することを求める。」というものですが、求めることがこの会合の本来の目的ですか。今合意して採択することは難しいかもしれませんが、何年後に何をどのくらいするということを決めなければあまり拘束力を持たないように思えます。

原油や食料の値上げについても「最近の原油及び一次産品価格の高騰の背景にある実需・金融両面の要因に関する分析並びに商品先物市場の透明性の向上のためのものを含む関連する国内当局及び国際機関による努力を支持した」と書かれていて、具体的にどのように解決するのかが見えてきません。原油価格や食料価格の高騰は先物投資の殺到やバイオエタノールの生産、途上国での需要の増加などがあげられます。それらを解決しなければ今後もこの危機は続くでしょう。もちろんそれはそう言うだけでは何ともならないことは明らかです。途上国に食糧支援をするだけではいけませんし、それでは発展途上国が先進国の物質的援助に依存するだけです。その解決には途上国における人材の育成や発展途上国の政府が援助を着服しないようにするための改革など取り組みなど多岐にわたるものです。それについての具体的な議論もなしに、ただ目標に向かって取り組むと言うだけではいけません。

 そもそもまず感じることは、高級ホテルでそのような会合を行うのは議題にあったことなのかということです。サミットの期間中、ワーキングランチやワーキングディナーと称して食事会が行われました。洞爺湖サミットのウェブサイトには、食事会のメニューが掲載されていましたが、食事は豪華で政治や経済についての会話が飛び交うランチョンパーティーやディナーパーティーのようなものでしょう。その中で発展途上国の貧困問題や食糧問題が話し合われると考えるといささか皮肉な感が否めません。地下核実験を行いながら朝鮮民主主義人民共和国に核兵器の廃絶を求めるどこかの国と同じくらい皮肉です。

 巨額の費用をかけて権力者のみが集まる割にあまり拘束力を持ちそうにないサミットそのものの在り方を見直すべきではないでしょうか。

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