サミットをとらえて

  526日から527日にかけて、サミット(主要国首脳会談)が三重県志摩市の賢島で行われました。世界各国の問題について話し合われ、世界経済の持続的な成長、国際的な移民、難民移動の対策、その他世界各国の問題ついてG7が緊密に連携する旨の声明がまとめられました。サミット後、アメリカのオバマ大統領がアメリカ大統領として初めて広島を訪問し、被爆者と会話と抱擁を交わしました。そして核なき世界を目指すと宣言しました。しかし、原爆投下を謝罪する言葉はありませんでした。賢島および平和記念公園の外ではサミットの開催および謝罪なき被爆地訪問に対して左翼および右翼による抗議活動が行われました。

 安倍総理大臣は作成した資料を基にG7の首脳たちの前で世界がリーマンショック前夜のようであると述べたようですが、G7の首脳たちから軽くあしらわれたようです。イギリスのキャメロン首相やフランスのオランド大統領には「危機の中にあるとは言えない」とコメントされ、フランスの新聞ル・モンドでは安倍総理大臣の発言を「無根拠なお騒がせ」と報じました。資料や発言が報じられ始めると安倍総理大臣はリーマンショック前夜とは言っていないと釈明しました。日本の経済成長率がG7の中で最低を記録し、その失態を世界経済にこじつけようとしましたが、まったく相手にされなかったためにさらなる失言を繰り返す安倍総理大臣の言葉は国際社会でも軽率で信用に値しないものとなっていることが浮き彫りになっています。

 第二次世界大戦の末期、原子爆弾を広島と長崎に投下してから71年が経ち、加害国の元首が被爆地を訪問することはとても意義深いものです。先の原爆投下では20万人以上が亡くなり、そこで放出された放射線による健康への影響は現在でも完全には解明されていません。オバマ大統領は被爆地の実情に原爆を投下した加害国の元首として初めて触れ、核廃絶への決意を深めたものと思われます。その意味でこの訪問は歴史的にも政治的にも意義深いものであるといえます。しかし、原爆投下は非人道的な行為であったと認め、謝罪すべきではなかったのでしょうか。オバマ大統領の演説を聴いていると、人類の歴史が争いに満ち溢れたものであったこと、核保有国は今こそ恐怖の論理から逃れ、核兵器のない世界を追求することを宣言しています。しかし、そこには昨年の安倍談話同様、ごく一般的な視点から俯瞰したような内容が大半を占め、原爆を投下した加害国の元首として何を思うのかが見えてきません。アメリカ国内で依然として原爆投下が戦争終結のために必要であったという声が根強いことに配慮したのでしょうが、単に核廃絶を目指す主張をアピールする場として利用している印象を拭いきれません。

 毎年思うのですが、サミットには何の意味があるのでしょうか。再確認する、コミットする、緊密に連携する・・・など空疎な言葉が躍ります。現在全世界で問題になっているタックス・ヘイヴンを利用した大企業の租税回避や政治家たちの不正資金疑惑には何も触れませんでした。それ以上に空虚なのは、安倍総理大臣でしょうか。安倍総理大臣はG7の首脳たちに伊勢神宮を訪問させ、オバマ大統領には被爆地広島を訪問させて、自らの実績をアピールしたかったのでしょうか。また、リーマンショック前夜発言などをはじめとして、サミットで世界経済の危機を煽り、それを消費税の増税延期の口実にしようとしています。安倍総理大臣がサミットという国際会議の場ですら日本国内に向けて自分を演出する舞台としか見ていないことは明瞭です。自分を演出するためなら簡単に空虚な言葉を口にし、過去の発言を翻すような総理大臣が国際社会を主導できるとはとても思えないのです。言葉が軽んじるような総理大臣は即刻政治の世界から追放しなければ日本の国際的な地位はこれからも凋落していくでしょう。

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