映画「靖国 YASUKUNI」問題

 最近「靖国 YASUKUNI」(以下単に靖国)が世間を賑わせています。この映画は文化庁の独立行政法人である日本芸術文化振興会から750万円の助成金を受けて作られています。そこで稲田朋美をはじめとする自民党の若手議員が「作品の政治的中立性が守られておらず文化庁の助成金の基準に違反しているのではないか」として試写会の開催を要求しました。出演している刀匠が劇中の自身の映像の削除を要請していると言う国会議員もいました。試写会が行われたのち、週刊新潮がこの映画は反日映画であると報じました。それを受けて全国の映画館には右翼団体の街宣活動を恐れて上映を取りやめる映画館も出ました。本当に街宣活動があったところもあったようですが、たいていはただの過剰反応であったようです。

その中で右翼団体側も火消しに躍起になりました。数団体の右翼団体の会長が主宰して右翼団体関係者を対象とした独自の試写会が新宿で行われました。右翼関係者たちはスクリーンを食い入るように観ました。試写会後討論が行われ賛否両方の意見が交わされました。無視して差支えないという意見から、信仰心を侮辱しているという意見まで様々でした。絶賛する意見はほとんどありませんでしたが。そのほかにも劇中の写真資料や100人斬り新聞記事の信憑性を問われるなど日本中で大変な騒動となりました。

 そこで私は実際に靖国を観ました。映画自体はあまり政治的意図を感じさせる描写は無く、撮影した映像を淡々と流すだけの描写が多かった印象を持ちました。世間で言われるほど反日の要素はあまり無く、ほぼ皆無といえます。というよりも右翼の視点も靖国神社に反対する人の視点も取り入れてうまく中立性を保っています。いくつかの靖国神社に対する視点や靖国神社で起こっていることを映像で紹介して靖国神社とはどのような所か、またはどのような所であるべきか、アジアの人々はどう接するべきかの問題提起をしているようでした。少なくとも意見を押し付ける映画ではありませんでした。大いに見る価値のある映画であると思いました。

  ここからは映画の内容に触れる部分があります。これから観たい人は見ないでください。                                                                  

そういう人でないから見る

右翼団体の街宣車も周辺にはいませんでした。

このような映画でいちいち試写会を要求する国会議員は、右翼よりも柔軟性に欠ける、日本の文化は日本人にしか分からないと考える、排外主義者であると思うのは私だけでしょうか。彼らの手にかかれば、アジアで作られた太平洋戦争を描いた映画はすべて上映禁止に追い込まれそうです。

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