新型コロナウイルス流行

 全世界で新型コロナウイルスの流行が続いております。昨年12月に中国で初めての感染者が確認されてから全世界に感染が広がりました。日本でも今年1月に初めての感染者が確認されてから、岩手県以外のすべての都道府県に感染が広がり、516日までに16千人以上に感染が確認され、このうち725人が死亡しました。なお、この数字は37.5度以上の熱が4日以上続き、呼吸困難や倦怠感があるなどの条件を満たした場合に受けられるPCR検査を基準にしたもので、日本の検査数はアメリカ大使館から信頼性に疑問を呈されているものです。

新型コロナウイルスの感染拡大は様々な分野に及び、3月には今年7月に予定されていた東京オリンピックを1年延期することが決定されたほか、様々な会議やイベントが中止やオンライン開催を余儀なくされました。48日、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき政府は7都道府県に緊急事態を宣言し、16日には対象地域は全都道府県に対象地域を拡大しました。514日、39の都道府県で緊急事態宣言が解除され、残る8都道府県については、直近1週間の累積報告数が10万人あたり0.5人以上であることを条件に解除するようです。

 この間の政府の打ってきた施策は、とても厳しいPCR検査基準の公示、和牛商品券や旅行券といった商品券の配布や、400億円以上もかかって発表から1か月以上経った今でも全戸に配られておらず、挙句不良品が続出した布マスク2枚の配布など、およそ効果的とは思えないものが多くあり、それすらも実行が遅れている状況です。東京都ともども東京オリンピック延期を決断したくないばかりに対策が遅れ、被害が拡大した側面は否定できません。この期に及んで政府は感染拡大終息後に観光・飲食を促す「go toキャンペーン」なるものに16千億円以上の予算をつぎ込んだ補正予算を国会で成立させました。安倍政権も中央官庁も正確な感染者数どころか自らが置かれている状況も全く把握しておらず、あろうことかこの機に乗じて目先の利権を追い求めているとしか思えません。

状況把握も意志決定も遅い政府に対して、最初右往左往する自治体も見られましたが、休業補償や各種手当など独自の施策を行う地方自治体が多くありました。吉村洋文大阪府知事、鈴木直道北海道知事、小池百合子東京都知事など、自分が明確に何か行動している(とメディアを通して見せられる)ものが目立ったかと思われます。行った施策の是非はともかく、これを機に地方分権を進め、都道府県の権限を強化すべきかと思われます。

右翼民族派や左翼にも活動を自粛する団体が少なくない中、少数で活動を継続している団体や個人もいます。高まる野党や社会からの批判により51日、国民一人あたり10万円の定額給付金を盛り込んだ補正予算案が可決されましたが、支給のめどが立っていない自治体も少なくありません。次は事業者への休業補償を早急に打ち出すべきです。休業補償を行う前提で緊急事態宣言を行えば危険を冒してまで営業する店舗はそれほど出なかったのではないでしょうか。それなら憲法改正して強権を政府に付与するよりも乱用されるリスクは少ないし、迅速に対応できるはずです。そもそも現行憲法の下で作られた法律もまともに運用できない(しようとしない)のに憲法改正をしたところで適切に運用できる保障がありません。

緊急事態宣言も定額給付金の給付も多くの人が声を上げたことで実現したことです。政府が国民の健康と生活を守らないのであれば、思想に関係なく民衆は政府に国民の生命と財産を守る施策を要求しなければなりません。自粛要請に従わずに営業している店舗を歪んだ正義感のままに攻撃しても、社会に亀裂を広げるだけです。そして状況判断も意思決定もまともにできない安倍政権は退場し、安倍内閣の大臣以外の正確な状況把握と的確な意思決定が可能な内閣で今後の事態の収拾を図るべきです。

(以下67日追記)

525日をもって全都道府県で緊急事態宣言が解除され、人々は徐々に日常を取り戻しつつあります。しかし飲食業や観光業をはじめとして経済は大打撃を受け、再建は容易ではありません。また福岡県北九州市や東京都で集団感染が発生し、小池都知事が「東京アラート」を発するなど、まだ流行の第二波があるのではないかという懸念が消えません。

麻生太郎財務大臣は「日本の死亡率が少ないのは民度のおかげ」などと言っていましたが、少なくとも安倍内閣や自民党の果たした役割がとても小さいことに変わりはありません。日本において新型肺炎の流行が始まってから、世論や野党の国会議員の要望が高まってからようやく政府が何らかの施策を実施したかと思えば、時間がかかりすぎる上に決定プロセスや予算の流れが不透明であったりすることが相次ぎました。配布が大いに遅れている「アベノマスク」の調達にかかわった4社の決定プロセス、中小企業や個人事業主に対して支給される持続化雇用金事業が一般社団法人サービスデザイン推進協議会から電通など7社に委託された問題がその最たるものでしょう。また専門家会議の議事録が残っていないことなども明らかになり、感染を確認するPCR検査を受ける基準が決定されたプロセスも不透明なままです。情報公開は進まず、後世への検証も困難な状態です。会議の記録も碌に取らない、政策決定のプロセスを明らかにしない政府において誰が政策決定の責任を取るというのでしょうか。情報公開が声高に叫ばれるこの社会において、秘密主義の政府を誰が信用できるというのでしょうか。このような体たらくでは後世、同じような感染症の流行が発生したときに未来の国民は今回の事例から何も学ぶことができません。私たちは未来の人々に対して責任を負っているのです。感染拡大が収まりつつある今こそ、可能な限り今回の新型肺炎流行とそれに対する施策を分析し、総括し、より多くの教訓を後世に残さなければなりません。

日本で新型肺炎の流行が収まりつつあるといえども、コロナウイルスが世界から消えてなくなったわけではありませんし、今回の新型肺炎の流行により世界経済は大きな打撃を受け、社会の仕組みは大きく変わったと思われます。流行前の社会に完全に戻ることはないでしょう。皆様につきましてはくれぐれも健康管理を怠らず、ご自愛ください。そしてコロナ後の日本社会を、そして世界を共に考え、作っていこうではありませんか。

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