ロシアのウクライナ侵攻

 224日、ウクライナ東部の新ロシア派武装組織が一方的に独立を宣言した地域の保護を名目として、ロシア軍がウクライナとの国境を越えて軍事行動を始めました。ロシア軍はウクライナの首都キエフをはじめウクライナ全土で戦闘を繰り広げ、チェルノブイリ原子力発電所が占領された他、子供を含む民間人にも死傷者が出ています。日本やアメリカ、ヨーロッパ連合(EU)諸国はロシアの軍事行動を「侵略」と断定し、矢継ぎ早に制裁措置を実施しました。加えて27日には国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの金融機関の一部を外す決定が下され、ロシアの政府関係者への資産凍結も行われました。これに対しロシアのプーチン大統領は制裁に加わる国々に対して核兵器の使用まで仄めかしています。ウクライナのゼレンスキー大統領は国民総動員令に署名し、全土に戒厳令を敷いたほか、国内外から義勇兵を募集しています。ロシア国内を含む世界各地でロシアの侵攻に抗議する集会やデモ行進が行われていますが、ロシア政府はそうした活動に参加する自国民を拘束しています。ウクライナとロシアの間での戦闘が長期化の兆しを見せている一方、双方の和平の試みも続いています。

ロシアがウクライナで行っていることは紛れもない侵略であり、断じて許してはなりません。まして核兵器の使用など国連の常任理事国まで務めている大国の国家元首の発言として言語道断です。ロシアのプーチン大統領はウクライナの非軍事化と非ナチス化を実現すると宣言していますが、ロシアがこれまでにとっている行動こそドイツ人差別を口実にズデーテン地方を併合したナチスのやり方そのものです。平和を希求するウクライナ国民のみならず世界中の人々の想いを裏切り、第三次世界大戦をも誘発しかねない軍事侵攻に踏み切ったロシアは戦争を止めて即刻ウクライナから撤退すべきですし、プーチン大統領はウクライナ国民とロシア国民、そして世界に謝罪すべきです。

その一方で日本が果たしてアメリカや北大西洋条約機構(NATO)加盟国に追従し続けてよいのかは疑問が残ります。アメリカはドイツへの派兵やウクライナへの武器供与を決め、ドイツやスウェーデンもウクライナへの武器供与を決めましたが、ウクライナがNATOに加盟していないことを理由にウクライナへの軍事介入はしない様子です。ロシアの軍事行動も諸外国の軍事介入がないことを見越していることでしょう。ロシアが軍事行動の起こした原因は様々あるかもしれませんが、具体的な理由の一つはアメリカの影ではないでしょうか。ウクライナはロシアの影響から逃れるためにNATOへの加盟を模索していました。ソ連解体後、独立した東欧諸国が次々とEUNATOに加盟していく中、ウクライナがNATOに加盟することはロシアからすればアメリカ軍が自国の目と鼻の先まで迫ってくることを意味し、脅威を感じるでしょう。この点は日本の北方領土問題と共通しています(プーチン大統領も過去に北方領土返還の条件の一つとして駐留する外国軍隊の撤退に言及していましたが、これはソ連の時代から一貫していることです)。ロシアは冷戦後絶えずアメリカやEUの影を恐れてきて、その備えとして今回の軍事行動に踏み切ったと解釈することができます。もちろん現在のロシアの侵略を正当化することは一切できませんが、ロシアにはロシアなりの論理や戦略があって動いているということです。NATOないし多国籍軍による軍事介入を絶対に認めることはできませんが、その気になればすぐにでも軍事介入できるのにウクライナに武器を供与してロシア軍と戦わせるだけの国々に果たして正義はあるでしょうか。日本含む多くの国々はロシアに対して経済封鎖を行っていますが、中国がロシアへの支援を打ち出しているほか、中南米にもロシアへの制裁に加わらない国が出ています。日本は安易に主要国に追従するのではなく、紛争解決のために日本の果たせる役割を模索するべきではないでしょうか。

この紛争を機に日本で憲法改正や核武装について議論が激しく交わされていますが、私は憲法改正に反対します。日本国憲法の前文や第9条の内容は日本が他国を侵略しないためにあります。その上で平和を愛する諸国民を信頼するものです。現状で憲法改正をしてもアメリカに追従する歪んだ現状を追認するものにしかなりませんし、まして核武装をすることは現在プーチン大統領が諸外国に対して行っている脅迫行為に正当性を与えることになり、極めて危険です。日本は日本国憲法の精神を生かして、紛争に対しては軍事的な解決でなく平和的な解決を絶えず希求しなければなりません。それが日本の果たせる独自の役割ではないかと考えます。

まずロシアの侵略に反対し、一刻も早くウクライナからロシア軍を撤退させなければなりません。その一方で安易にアメリカやヨーロッパ諸国の行動に追従したりせず、世界平和のために果たすべき役割を常に追い求めて行動すべきです。これまでロシアに抗議する方々のほとんどは戦争を望んでおらず、平和を望んでいます。私は平和を希求する諸国民とともにあります。

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