安倍晋三元総理大臣射殺事件

 今年781132分、奈良県の近鉄大和西大寺駅前で参議院選挙の応援演説をしていた安倍晋三元内閣総理大臣が元海上自衛官に自作の銃で至近距離から撃たれ、病院に搬送されましたが同日173分に死亡しました。歴代最長の在任期間を誇った安倍元首相の~税は血塗られた惨劇で幕を下ろしました。この事件を受けて政府は927日に安倍元首相の国葬を行うことを決定しましたが、事件の全貌は解明の途上です。

いうまでもなく、いかなる事情があろうと法治国家において暴力で現状を打破しようとする行動は許されません。犯人は母親が統一教会にのめり込んだことから統一教会(現在の世界平和統一家庭連合)への恨みを募らせて、統一教会と関係が深い安倍元首相を狙ったとの報道がありますが、それは今回行われた犯罪行為を正当化する理由には一切なりえません。犯人にはしかるべき法の裁きが下るべきですし、今回の犯罪とは関係なく犯人を今回の凶行へと追い込んだ統一教会と政治の関係は白日の下に晒されるべきです。

他方、今回の事件で警察は安倍元首相の前方にばかり集中して背後をあまり警戒せず、犯人をみすみす真後ろに近づけてしまうという醜態をさらしました。これまで多くの識者が今回の事件は未然に防げたと指摘し、奈良県警察には批判が殺到しました。今回の警備体制の不備は検証されるべきでしょう。一部に、警察の委縮が原因で警備が手薄になったという言説があるようです。2019年に安倍元首相の演説に野次を飛ばした聴衆を北海道警察が排除した事件について、今年札幌地方裁判所が北海道警の排除を違法とする判決を下しました。この判決に警察が委縮して今回の警備体制に影響を与えたというのです。そのようなことを言っている人は警察権力拡大に手を貸す警察の手先としか思えません。政治家の演説に野次を飛ばすことと、警察が特定の聴衆を排除することと、問題の警備体制は全く別の問題です。警察がやはり野次を飛ばす聴衆の排除が必要だと考えだしたら「警備」の名目で国民に何をするかわかりません。安倍元首相はかつて自分に罵声を飛ばす民衆を「こんな人たち」と言いましたが、状況によっては誰でも「こんな人たち」になりえて、警察の不当な取り締まりを受ける可能性があります。そのようなことは絶対に防がなければなりません。

今回安倍元首相は一人の男に街頭で殺されるという政治家として劇的な最期を遂げたわけですが、その最期と安倍内閣の評価は別のものです。詳細は過去の時局問題をご参照していただくとして、私から見れば安倍内閣は株価と見せかけだけの経済成長と引き換えに日本を法治国家として見る影もなく衰退させた元凶でしかありません。安倍内閣の下で報道の自由は狭まり、公文書の信用はなくなり、国会は議論した事実を作るためだけの場となり、安倍元首相を中心とした利権政治が横行しました。私は安倍元首相が総理大臣を辞任する際、「震えて眠れ」という言葉を贈りましたが、安倍元総理大臣はここまでの様々な疑惑のすべてを白日の下にさらし、法の裁きと社会的な制裁を受けるべきと考えてのことです。にもかかわらず、安倍元首相が何も語らぬままこのような最期を迎えてしまったことは残念でなりません。

私自身に安倍元首相の死を追悼する気持ちはありませんが、追悼したい人が追悼すればよいと考えています。そういった意味で一律に国民に弔意を呼びかける安倍元首相の国葬には反対です。在任期間が憲政史上最も長かろうが、諸外国にどれだけの功績を残そうが、なぜ合同葬や国民葬ではなく国葬でなければならないのでしょうか。今回の国葬決定について自民党は国民に弔意を押し付けることはない、国民に弔意を強制しているという野党の批判はずれていると説明していますが、国葬を行うことの意味を理解していないと言わざるを得ません。安倍元首相の死を政治利用するなという批判がありますが、安倍元首相の死によって過去の負の部分がなくなるわけではありませんし、政治家の死にかかわる様々な事柄は十二分に政治的なものです。アメリカ連邦議会上院が安倍元首相の功績を称える決議を可決したのも、海外から弔問希望が殺到しているのも今後の外交についての布石になりえますし、安倍元首相の国葬決定自体も安倍元首相の派閥に配慮した十二分に政治的な決定なのです。その国葬にロシアのプーチン大統領がおそらく参加できないと報道されていますが、これが政治的でなくて何なのでしょうか。

今回の事件により自民党内で安倍派を率いていた安倍元首相が亡くなり、岸田内閣の自民党内での基盤は盤石なものとなるでしょう。それと同時に国家権力が国民の自由を奪おうと画策しているでしょうが、国民はみすみす自らの権利を差し出してはならないのです。自由とは何か、何のために権利があるのか、本当に税金を使って安倍元首相の国葬をすべきなのか、私含め国民一人一人が深く考えなければなりません。

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