参議院選挙の結果をとらえて

 721日、参議院選挙が告示されました。自由民主党は57議席と開戦前に比べて10議席減り、公明党は14議席と4議席増えました。野党では日本維新の会が10議席、立憲民主党は17議席と躍進し、国民民主党は6議席と議席を減らしました。その一方でれいわ新撰組は山本太郎代表が落選したものの2議席を獲得、NHKから国民を守る党が1議席を獲得し、政党要件を満たしました。また社民党はかろうじて1議席を獲得し、政党要件を維持しました。いずれにせよ自民党、公明党、日本維新の会の議席は参議院全体の3分の2を占有することができませんでした

 今回の選挙の投票率は戦後2番目に低い48%となりました。内政でも外交でも目立った成果を上げることができない現在の自民党政権を支えているのは、主に民主党政権のトラウマと強い現状維持バイアスだと思われます。どれほど自民党と安倍内閣が無能であろうと、野党がそれ以上に信用できないというのが多くの有権者の認識でしょう。今回は与党の議席を減らすことができましたが、野党のさらなる躍進には現状維持バイアスを打ち破るビジョンと選挙に行かなかった有権者にアプローチする別の手段が必要です。特に旧民主党の流れを組む政党(国民民主党、立憲民主党)は民主党政権の何が期待され、何に失望されたのか、その反省として今後何を成せるのか、きちんと有権者に説明すべきです。私としては、単なる無能であった民主党政権は現在の無能で悪意ある安倍政権よりまだ評価できると考えています。

 安倍総理大臣は憲法改正に向けて議論を進めていくとしていますが、世論調査の結果から有権者の主な関心は社会保障や教育で、憲法改正にほとんど関心がないことは明白です。自民党が10議席減らし、自民党に比べて憲法改正に慎重な公明党が4議席増やしたことからもそれが裏付けられます。しかし、安倍総理大臣は憲法改正を進める姿勢を崩していません。国民民主党の玉木雄一郎代表が憲法改正議論に前向きな姿勢を示したことから、何らかの布石があったのでしょう。野党が有権者から信用されない理由の一つはこのような姿勢なのではないでしょうか。

 今回議席を獲得したれいわ新撰組はビジョンを曲がりなりにも示そうとしていたように見受けられました。れいわ新撰組は今回の選挙で重度の身体障害を持つ候補者2人を当選させましたが、これから国会に大きなうねりをもたらすものと期待しています。すべての人は個人として尊重されるべき社会で、理想の社会を現出するために国会議員になりたいと考える方がいれば、障害を持っているいないにかかわらず、まずその意志が最大限に尊重されなければなりません。そして2人が何不自由なく議員活動を行えるようにする義務が山本太郎代表だけでなく国民全員にあります。その上で任期の間にその議員が何を行ったかで評価されるべきです。

 与党が議席を減らしたとはいえ、国会は依然として与党が多数の状況です。今回の選挙では与野党がお互いの勝利条件を低く設定していたため、お互いが勝利を喧伝している状況です。本来世論のとおり年金問題や教育問題など、国民の生活に直結する問題について議論を進めるべきなのでしょうが、与党はなりふり構わず野党を切り崩し、憲法改正を実行する可能性があります。国民は国家権力の暴走を監視し、食い止める責務があるのです。08憲章に示されるように、国民は国家権力に支配されるだけの無垢な子供ではありません。国家の主権者なのです。

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