参議院選挙の結果をとらえて

 710日、参議院選挙の投開票が行われました。自由民主党は63議席と開戦前に比べて8議席増え、単独過半数の議席を獲得しました。公明党は13議席と1議席減りました。野党では日本維新の会が6議席増やして21議席となり、国民民主党は2議席減って6議席となりました。一方立憲民主党は17議席と改選前から6議席減らし、共産党も2議席減って4議席となりました。れいわ新撰組は山本太郎代表含む3議席を獲得し、参政党とNHKから国民を守る党がそれぞれ1議席ずつ獲得しました。また社民党はかろうじて1議席を獲得し、政党要件を維持しました。憲法改正に賛成する自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の議席は参議院全体の3分の2を占有することとなりました。

 今回の選挙の投票率は52%となり、前回の選挙から少し増えました。選挙期間中の今月8日、応援演説をしていた安倍晋三元総理大臣が元海上自衛官に殺害される事件が起こったため、この事件に対する同情票も自民党の議席に大きく貢献したと見られます。もちろんこれだけが与党大勝の原因ではありません。昨年の衆議院総選挙の結果を受けて国民民主党が野党共闘から離脱し、与党や日本維新の会に接近していきました。立憲民主党も枝野幸男前代表に代って就任した泉健太代表が共闘に積極的ではなく、今回の選挙で野党共闘はまともに機能していませんでした。加えてロシアのウクライナ侵攻によって国防への不安が高まり、日本国憲法の掲げる平和主義への信頼が揺らいだことも大きいでしょう。様々な事情で既存の与野党が拾いきれない票を今回少ない議席を獲得した新興政党が吸収した形となりましたが、一強多弱の状態に陥っています。

自民党や公明党には曲がりなりにも長年政権を運営してきた実績と強固な地盤、選挙に当選するためのノウハウが数多ありますし、これに他の政党が打ち勝つのは並大抵のことではありません。選挙が民主主義のすべてではありませんし、選挙結果に一喜一憂するべきではありませんが、今回の選挙結果は紛れもなく現在の護憲派野党(立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組)を映す鏡となっています。護憲派野党は現在の議席数から今一度現状を認識して、地道に政治的な実績を積み重ねつつ、なぜ憲法を変えなくてもよいのかを訴えることでしか現状を打開できないでしょう。自民党の政策をすべて支持して自民党に投票した方ばかりではありませんし、それは自民党以外の政党でも同様のはずです。思い通りの結果にならずいらだつ方も多くいらっしゃるでしょうが、自民党に投票した有権者を罵倒したところで大多数の有権者の心は離れてしまいます。支持拡大のヒントは今回議席を獲得した少数政党にもあるはずですし、それは支持するかどうかとは別の問題です。

 総理大臣を辞任してもことあるごとに岸田内閣に意見してきた安倍元総理大臣が死去した今、岸田内閣にとっては思い通りのことがやりやすい状況になったと言えるでしょう。安倍元総理大臣の国葬を決定したのも自民党内の派閥に配慮した結果と思われます。岸田内閣・自民党は当面感染者が再び増え始めた新型コロナウイルス対策や経済問題など、国民生活に直結する問題に取り組むと考えたいのですが、なりふり構わず憲法改正を実行する可能性もあります。選挙は終わりましたが、これで政治への関心を失っていいわけではありません。国家権力の暴走を食い止めるのは最終的に国民の力ですし、これからも政治を監視し続けるのは国民の責務です。

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