中国問題

198964日、民主化運動を中国政府が人民解放軍を用いて武力弾圧した天安門事件が起こりました。数百人から数千人が殺害されたと言われていますが、真相は未だ明らかではありません。今年はそれから30年の節目に当たります。私も事件から30年を迎えた64日、渋谷駅前で行われたキャンドルナイトでささやかながら祈りを捧げました。

また、1997年にイギリスから中国に返還された香港では、マカオとともに一国二制度のもとで国防・外交を除いて高度な自治を行っています。しかし今年4月、香港市内で拘束された犯罪者を中国本土に引き渡すための逃亡犯条例改正案が立法府に提出されたのをきっかけに市民による運動が活発化しています。中国政府による恣意的な運用や自治への介入が懸念されるため多くの市民による抗議デモが巻き起こり、警察による強硬な弾圧やマフィアによる暴力、武力行使をちらつかせる中国政府にも屈しませんでした。その結果、9月には林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が条例案の撤回を発表し、翌月正式に撤回されました。しかし市民の運動は香港行政府の横暴や香港警察の暴力を糾弾する運動に変化していき、現在も続いています。

言うまでもなく、天安門事件において言論による非暴力の運動を武力で押しつぶした中国共産党の蛮行を絶対に許すことはできません。この30年で中国はめざましい経済成長を遂げ、日本を抜いて世界第二位の経済大国となりましたが、その罪が許されるわけではありません。

また香港市民の運動は一部暴徒化した運動はあったものの、香港政府や中国政府の圧力に屈せずあくまで平和的な活動により悪法を撤回させました。この成功はスペインのカタルーニャ地方の分離独立運動などに影響を与えつつあります。

一方で、日本国民はその手できちんと民主主義を運営できているでしょうか。「公民は正真正銘の国家の主人とならなければならない。"明君""清官"に依存する臣民意識を捨て去り、権利を根本とし参与して責任を負うという公民意識を育み、自由を実践し、民主を躬行し、法治を尊奉することこそ中国の根本的な活路なのである」これは中国の民主化運動を担った李暁波氏らが残した「08憲章」の一部です。憲法を強引にねじ曲げ、民主主義どころか法の支配も理解していないような政治家が跋扈しています。そして今や政府が統計を改竄するところまで堕落しています。果たしてこれで現在の中国に伍することができるでしょうか。「08憲章」は中国国民だけでなく、民主主義を担う全ての人々に向けられたものだと私は捉えています。

なお、天安門事件以降、西側諸国から経済制裁を受けていた中国に最初に手を差し伸べたのは日本です。1992年に天皇訪中が実現してから、中国と西側諸国との関係は修復していきます。中国の民主化は達せられるべきですが日中関係は維持されなければなりません。

そして今一度日本国民は自分たちが民主主義をきちんと担えているのか自省する必要もあります。自由のない一党独裁国家で民主主義を訴える中国の民主化運動から日本国民が学ぶことは多いはずです。

最後に、自由と民主主義のために迫害され、命を落とした方々のご冥福をお祈りいたします。また逃亡犯条例の撤回を勝ち取った香港市民の勝利をお祝い申し上げつつ、香港市民のこれからのさらなる闘いを見守っています。そして香港市民の運動を契機として中国国民が自らの自由と権利を自覚し、中国本土の民主化が果たされることを願うばかりです。

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