中国問題

今年7月で、中国共産党が1921年に第一回党大会(結党大会)を開催してから100年を迎えました。中国共産党はコミンテルンの指導の下、列強国と軍閥から中国を解放し、中国において共産主義国家の樹立するために結党されました。国共合作で中国国民党と共に日中戦争を戦った中国共産党は、第二次国共内戦を経て1949年に中華人民共和国を建国しました。大躍進政策の失敗や文化大革命の混乱、改革開放政策を経て中華人民共和国は今や世界第二位の経済大国となり、中国共産党は憲法上中華人民共和国を指導する唯一の政党として君臨しています。その裏にはソ連やインド、ベトナムとの戦争、周辺諸国との緊張関係、チベットやウイグルをはじめとした少数民族の迫害、天安門事件に代表される反体制派の弾圧など、血塗られた負の側面も数多あります。

現在の習近平国家主席のもと中国が軍事力増強や香港、台湾への圧力、海洋進出を進めていることに、アメリカをはじめ世界各国は警戒感を強めています。バイデン大統領は「開かれた太平洋」を標榜し、6月に開催されたコーンウォールサミットでも「開かれた太平洋」を目指して参加国とASEAN諸国と連携していくことが確認されました。このような諸外国の態度に対して当の中国は反発を強め、習近平国家主席は中国共産党の結党100周年記念大会において、諸外国に対して中国に危害を加えないこと、台湾の統一を成し遂げることを宣言しました。米中をはじめ中国と周辺諸国との緊張は増すばかりです。

現在の中国政府は国家体制の維持のために、人工知能などの最新技術を含むあらゆるリソースをつぎ込んでいます。中国国内で海外のメディア視聴やウェブサイト接続は制限され、政府や中国共産党を批判するようなコンテンツに触れることはできません。国内で普及が進んでいる電子決済や画像認識の技術も個人の監視のために中国政府は利用可能なのです。中国共産党は結成当初、曲がりなりにも植民地の解放を目指していたのではありませんか。それにもかかわらず、現在の中華人民共和国はまさに結成された当時の列強より陰惨な行為を行っているといっても過言ではありません。中国共産党にとって現在の抑圧的な中国が結党時の理想の姿だというのでしょうか。その答えがいかなるものであるにせよ中国で起こっている不平等や弾圧を断じて容認することはできません。国家体制の維持のために国家のリソースをつぎ込んでいる国など長く続いてはなりませんし、中国政府は自らの統治の正当性を自由な言論でもって示すべきです。そして香港や台湾、そして太平洋における軍事的な威圧を平和のために止めなければなりません。

しかし、その一方で中国に対して抗議の意を表明するのは必ずしもアメリカに追従することと同じではないはずです。自由や平等、民主主義という価値観から日本はアメリカと同じ立場を取りやすいということは理解できますが、アメリカはアメリカの国益に基づいて動いているのであって、日本には日本の担うべき役割があるはずです。それを考えないままアメリカに追従すると、単なるアメリカの走狗として使い潰されるかもしれません。日米同盟を前提にしないで、中国とアメリカの二項対立に陥ることなく双方に意見を言える国に日本はなるべきです。

翻って日本の現状を見てみれば、新疆ウイグル自治区におけるウイグル人の強制収容について、国会での非難決議は野党の賛成にもかかわらず公明党が反対して否決されました。また自民党の二階俊博幹事長と公明党の山口那津男代表は中国共産党結党100周年に祝電を送りました。野党では立憲民主党の枝野幸男代表や小沢一郎衆議院議員も同様に祝電を送っていますが、与党の幹部が祝電を送っていることの方が重大です。二階幹事長が中国共産党に祝電を送っていることを菅義偉総理大臣が知らないはずがありませんし(知っていたとして意見できないかもしれませんが)、二階幹事長の祝電が日本政府の意思と受け取られかねません。日本政府は今月に迫った東京オリンピックの開催とそれに乗じた政権浮揚に躍起で、来年の北京オリンピックを控えた中国にもその足元を見られている始末です。現在の日本政府はおよそ日本と世界をどうしていくかというビジョンや立場など持たず、目先の利益や保身のためにただ米中双方のご機嫌を伺っているにすぎません。今年の10月には確実に衆議院総選挙が行われますが、そこは目先の利益や保身しか考えていない菅内閣、自民党、公明党に対して民意を示す一つの機会となります。

中国国内の抑圧や中国政府による対外強硬策は国際社会における大きな問題です。共産主義が悪だというのならそれでもかまいません(私個人としては共産主義そのものを否定しません)。中国政府や中国共産党の行動に対して意見を言うことも重要ですが、中国共産党の抑圧と恐怖を克服したその先にある理想が自由、平等と民主主義なのだとすれば、それらを基調とした日本国の姿を私たち一人ひとりがしっかりと考え、血肉としていかなければなりません。

自由、平等と民主主義を空疎なスローガンでなく真の理想とするために。

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