菅義偉内閣発足

 先月安倍晋三前総理大臣が辞任を表明してから半月あまりが断ち、914日、自民党総裁選挙が行われ、菅義偉前官房長官が岸田文雄政務調査会長や石破茂元防衛大臣に大差をつけて新たな自民党総裁に選ばれました。2日後の916日、菅総裁が国会で内閣総理大臣に指名され、菅義偉内閣が発足することとなりました。菅内閣は加藤勝信元厚生労働大臣を官房長官に任命し、安倍内閣から閣僚のうち麻生太郎財務大臣をはじめ11人を留任ないし横滑りさせただけに過ぎない内閣ですが、報道各社の世論調査によれば菅内閣の支持率はおおむね6割を超えています。

安倍前総理大臣辞任後も、二階俊博幹事長は留任し、自民党幹事長の最長在任記録を更新しています。おそらく菅内閣は二階幹事長と安倍前総理大臣の意向を無視できないのでしょうけれど、菅内閣からは何の活力も感じられません。菅内閣は安倍内閣から方針を劇的に変えることはなく、現状から劇的に何かを変えることはできないのではないかと考えられます。自民党総裁選挙の前、辞任会見で支持率が上がったことに気をよくしたのか、安倍前総理大臣が退任直前に敵基地攻撃能力導入の検討を談話にて発表しましたが、今そのような意義も効果のわからないことを議論している場合ではありません。それより今優先すべきことは、新型コロナウイルスの流行が収束しつつある今からさらに深刻化するであろう不況への備えでしょう(いうまでもなく新型コロナウイルス流行終息への道筋をつけることが大前提です)。

菅総理大臣は衆議院の解散総選挙は今のところ考えていないと言っていますが、衆議院の任期が来年10月までなのでそれまでには確実に行われるわけです。野党にとっては猶予がありません。自民党総裁選挙に先立って国民民主党と立憲民主党がそれぞれ解党ののち、新たな「国民民主党」と「立憲民主党」が結党されましたので急いで選挙準備を進めるべきです。また与党主導で選挙が行われたら野党の議席が間違いなく減ってしまうでしょう。共産党は22年ぶりに自党以外の国会議員を内閣総理大臣に指名しました。共産党に野党共闘の用意はあるということでしょう。

石破茂元防衛大臣は森友学園問題や加計学園問題の再調査を掲げていましたが、これは必ずおこなうべきでしょう。公平公正な政治を守り、法の支配を取り戻すためには重要なことです。首相官邸や内閣人事局の顔色ばかり伺っている中央官庁は腐敗していくばかりです。腐敗の極みにあるのは行政機関だけでなく、マスメディアも同様です。安倍内閣の時代、報道の自由度は民主党政権時代に比べて大幅に下がりましたが、そこには自民党や安倍内閣の陰陽使い分けたメディア戦略がありました。報道各社は国家権力に目を付けられないように委縮し、記者会見は茶番となっていったのです。報道各社の保身が、報道の自由を蝕んだといっても過言ではありません。権威主義や忖度を排し、公平公正な政治と報道を日本に取り戻さなければなりません。

ここまで様々述べましたが、株価と見せかけだけの経済成長と引き換えに法治国家日本を衰退させた何よりの原因は、戦後75年、政治を人に任せきりにして、与えられた憲法、与えられた民主主義を消化してこようとしなかった私たち国民一人一人の責任でもあります。今この状況こそ、ある意味で戦後75年の結実であるといえるのです。今こそ、国民一人一人が主権者としての自覚をもって自民党菅内閣の行動を監視しましょう。

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